「築40年超のマンションを売りたいが、耐震性が心配で踏み出せない」。そんなお悩みを持つお客様は少なくありません。
耐震診断を受けるべきか、不適合なら売れないのか――この記事では、診断の流れ・費用から結果別の売却ルート、札幌ならではの注意点まで網羅的に解説します。
最後まで読めば、ご自身のマンションに最適な売却戦略が見えてくるはずです。
マンションの売却価格を大きく左右するのが「耐震基準」です。まずは旧耐震と新耐震の違いを正確に押さえましょう。
日本の建築基準法は1981年6月1日に大幅改正され、耐震基準が強化されました。この日以降に建築確認を受けた建物が「新耐震基準」、それ以前が「旧耐震基準」と呼ばれます。
旧耐震基準は「震度5程度の地震で倒壊しない」設計であるのに対し、新耐震基準は「震度6強〜7でも倒壊しない」ことを目標としています。
2026年現在、旧耐震マンションは築45年以上が経過しており、全国に約103万戸が残存しているとされます。
国土交通省の調査によると、旧耐震マンションは新耐震と比較して成約価格が平均15〜30%低い傾向にあります。
札幌の市街地エリアでも、同じ立地条件の物件で500万〜1,000万円以上の差がつくケースは珍しくありません。ただし、耐震診断を実施して「適合」を証明できれば、この価格差を縮小できる可能性があります。
耐震診断と聞くと大掛かりなイメージがありますが、手続き自体は段階的に進められます。ここでは流れと費用を整理します。
マンションの耐震診断は一般的に以下の手順で行われます。
一般的なマンション売却では、第二次診断まで実施するケースが多いです。診断期間は2〜4ヶ月程度を見込んでおきましょう。
マンションの構造体(柱・壁・基礎)は共用部分にあたるため、耐震診断の費用は管理組合が負担するのが原則です。管理組合の総会決議を経て実施するのが一般的な流れとなります。
一方、売主個人が早期に診断結果を得たい場合は、専有部分の簡易診断を自費で依頼する方法もあります。費用は5万〜15万円程度です。
なお、札幌市では旧耐震建築物の耐震診断に対する補助金制度を設けています。補助率や上限額は年度により異なりますので、事前に市の窓口へ確認されることをおすすめします。
耐震診断で「適合」と判定された場合、「耐震基準適合証明書」を取得できます。この証明書は買主にとって大きなメリットとなり、売却を有利に進める強力な武器になります。
耐震基準適合証明書は、建築士事務所に所属する建築士や指定確認検査機関が発行します。取得の流れは次の通りです。
注意点として、証明書は売買契約前に取得しておく必要があります。引き渡し後に取得しても買主が税制優遇を受けられない場合があるため、早めの段取りが重要です。
耐震基準適合証明書があることで、買主は以下の税制優遇を受けられる可能性があります。
これらのメリットは買主にとって数十万〜数百万円規模の節税効果になります。売却活動において「適合証明書取得済み」をアピールすることで、旧耐震マンションでも購入検討者を増やすことが期待できます。
耐震診断を受けた結果「不適合」だった場合でも、売却を諦める必要はありません。状況に応じた3つのルートを比較して、最適な方法を選びましょう。
それぞれ一長一短があり、お客様の資金状況・売却の緊急度・物件の状態によって最適解は変わります。
たとえば、札幌の地下鉄沿線にある築48年・60平米のマンションを想定してみましょう。仲介の場合、新耐震の同条件物件の成約価格が1,200万円とすると、不適合のまま売却すれば850万〜950万円程度が目安です。
買取の場合は700万〜900万円程度ですが、仲介手数料が不要で売却期間も短縮できます。補強工事は管理組合全体で行う場合、1戸あたり200万〜500万円の負担となるケースが多く、補強後の売却価格が1,100万〜1,200万円まで回復する可能性があります。
このように、補強費用と価格上乗せ額を比較することで、どのルートが最も手元に残る金額を最大化できるか判断できます。
北海道、とりわけ札幌には本州とは異なる建物特有のリスクがあります。耐震診断と売却を考えるうえで、地域事情の理解は欠かせません。
札幌の地下鉄南北線・東西線・東豊線の沿線には、1970年代後半〜1980年代前半に建てられた旧耐震マンションが数多く残っています。駅徒歩圏という立地の良さから、築年数にもかかわらず一定の需要があるのが特徴です。
実際に道内の不動産流通データでは、地下鉄沿線の旧耐震マンションでも年間を通じて成約が発生しており、立地が良ければ売却は十分に可能です。ただし、耐震性の不安から買い手が価格交渉を強めてくる傾向があります。
札幌のマンションは本州の建物にはない2つのリスクを抱えています。
これらは北海道特有の構造リスクであり、本州向けの耐震診断記事では触れられない重要ポイントです。旧耐震マンションでは経年によりこれらの劣化が進んでいるケースがあるため、耐震診断時に構造体の劣化状況も合わせて確認することをおすすめします。
耐震面に不安を抱える物件でも、事前の準備次第で売却価格を引き上げることは可能です。ここでは実践的なポイントをお伝えします。
買主や不動産会社に安心感を与えるため、以下の書類をあらかじめ用意しておきましょう。
これらの書類が揃っていると、買主側が住宅ローン審査を進めやすくなり、結果的に売却のスピードと価格の両面でプラスに作用します。
一般的に、以下の条件に当てはまる場合は買取が適しています。
一方、時間に余裕があり、地下鉄沿線やJR沿線の好立地であれば、仲介で相場に近い価格を狙うのが合理的です。当社では両方の選択肢を比較したうえで、お客様の状況に合った売却プランをご提案しています。
A: 法的な義務はなく、耐震診断を受けていなくても売却は可能です。ただし、診断済みであれば買主の安心材料となり、売却活動を有利に進められます。
特に住宅ローン減税の適用を希望する買主にとっては、耐震基準適合証明書の有無が購入判断を大きく左右するポイントになります。
A: マンションの構造体は共用部分にあたるため、耐震診断の費用は管理組合が負担するのが一般的です。管理組合の総会決議を経て実施する流れになります。
売主個人が早期に結果を得たい場合は、専有部分の簡易診断(5万〜15万円程度)を自費で依頼する方法もあります。
A: 住宅ローン減税(年末残高の0.7%を最大13年間控除)、登録免許税の軽減(税率2.0%→0.3%)、不動産取得税の軽減(最大1,200万円控除)が適用される可能性があります。
買主にとって数十万〜数百万円規模の節税効果があるため、売却時の大きなアピールポイントになります。
A: 主に3つの方法があります。複数の買取業者から見積もりを取って比較する、耐震補強費用と売却価格の上乗せ額を比較して損益を判断する、補強工事後に適合証明書を取得してから売却する、といった選択肢です。
物件の状態や売却の緊急度によって最適なルートは異なりますので、まずは専門家にご相談いただくことをおすすめします。
同じテーマの記事
札幌市・近郊のマンション相場を棟ごとに見る成約データから棟ごとの㎡単価を出しています