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2026/07/08
不動産売却に配偶者の同意は必要?
不動産売却に配偶者の同意は必要?
「自宅を売却したいが、配偶者の同意は必要なのか」というご相談は、当社でも年間を通じて多くいただきます。
結論から申し上げると、不動産の名義や用途によって同意の要否は異なります。共有名義なら原則として全員の合意が必要ですし、単独名義でも居住用財産であれば配偶者の同意が求められるケースがあります。
この記事では、名義の種類別に同意が必要かどうかを整理したうえで、離婚協議中や相続時など実際に多いケースの対処法を、札幌での実務経験をもとに解説します。
不動産売却で配偶者の同意が必要になる3つのケース
配偶者の同意が必要かどうかは、大きく分けて3つのパターンで判断できます。ご自身の状況がどれに当てはまるか確認してみてください。
共有名義の不動産を売却する場合
夫婦で住宅ローンを組んだ場合や、共同で購入した場合は共有名義になっていることが多いです。共有名義の不動産を全体売却するには共有者全員の合意が必要です。
民法第251条により、共有物の処分(売却)は共有者全員の同意がなければ行えません。持分割合が夫7割・妻3割であっても、妻の同意なしに全体を売却することはできません。
なお、自分の持分だけを売却することは法律上可能ですが、持分のみの買い手は限られるため、売却価格は全体の時価に対する持分割合よりも2割〜4割ほど低くなるのが一般的です。
単独名義でも居住用財産である場合
「自分の名義だから自由に売れる」と思われがちですが、婚姻中の居住用不動産には注意が必要です。民法第761条では日常家事に関する連帯責任が定められており、自宅の売却は家族の生活基盤に直結します。
さらに重要なのが民法第762条第2項の規定です。婚姻中に取得した財産で名義が明確でないものは共有と推定されます。住宅ローンの返済に配偶者の収入が充てられていた場合、実質的な共有財産と判断される可能性があります。
実務上、不動産会社や司法書士は居住用財産の売却時に配偶者の同意確認を求めるのが通例です。同意なく進めた売却は、後にトラブルとなるリスクが高くなります。
婚姻中の居住用財産の処分制限
民法には、配偶者の居住を保護するための規定があります。例えば配偶者居住権(民法第1028条)は相続時の制度ですが、婚姻中であっても裁判所が居住の保護を認めた判例があります。
特に離婚を前提としたケースでは、一方的な売却が「財産の散逸行為」と見なされ、家庭裁判所から処分禁止の仮処分が出されることもあります。札幌でも年間数十件のこうした申立てがあり、慎重な対応が求められます。
共有名義と単独名義で異なる売却手続きの流れ
名義の形態によって、売却に必要な手続きや書類が大きく変わります。ここでは実務で押さえるべきポイントを整理します。
共有名義の持分と全体売却の違い
共有名義の不動産には、2つの売却方法があります。
- 全体売却:共有者全員が合意し、全員が売買契約書に署名・押印する方法。売却価格の100%を持分割合に応じて分配します
- 持分売却:自分の持分だけを第三者に売却する方法。他の共有者の同意は不要ですが、買い手が限定され価格は大幅に下がります
- 持分買取:共有者の一方が他方の持分を買い取って単独名義にしてから売却する方法。ローンの組み替えが必要になることが多いです
当社の経験では、全体売却が最も高値で成約しやすく、成約価格は持分売却と比べて平均30%〜50%高くなる傾向があります。できる限り全員の合意を得てから進めることをお勧めします。
単独名義でも注意すべき民法の規定
単独名義であっても、以下のケースでは配偶者への確認が実務上必要です。
- 婚姻後に購入した不動産:実質的な共有財産と判断される可能性があるため、配偶者の同意書を求められることがあります
- 住宅ローン返済に配偶者収入を使用:寄与分として持分が認められるケースがあります
- 配偶者が連帯保証人:売却によるローン完済が前提となり、保証人の同意も必要です
不動産の売却手続きでは、登記簿謄本・住宅ローン残高証明書・固定資産税評価証明書などの書類を事前に取得しておくとスムーズに進みます。売却の方法と費用の詳細はこちらをご参照ください。
離婚協議中・別居中に売却を進める実務手順
離婚や別居を伴う不動産売却は、感情面と法律面の両方に配慮が求められます。当社でも毎月5〜8件ほどこうしたご相談を受けており、実務的な進め方をご案内します。
離婚前の財産分与と売却タイミング
離婚に伴う不動産売却では、売却を先に進めるか、離婚を先に成立させるかでかかる税金が変わります。
- 離婚前に売却:夫婦共同の売却として、3,000万円の特別控除(居住用財産の譲渡所得特例)を双方がそれぞれ適用できる可能性があります
- 離婚後に売却:財産分与として不動産を取得した側が売却する形になります。分与を受けた側には贈与税はかかりませんが、譲渡所得税は売却時に発生します
- 離婚後2年以内:財産分与の請求期限は離婚成立から2年です。この期限を過ぎると分与請求権が消滅します
一般的に、住宅ローンが残っている場合は離婚前に売却してローンを完済する方がトラブルが少ないとされています。札幌市内の戸建て・マンションでは、売却期間として平均3〜6ヶ月を見込む必要がありますので、早めの着手をお勧めします。
別居中に相手の同意を得る方法と委任状の活用
別居中で直接の話し合いが難しい場合、以下の方法で売却を進めることができます。
- 弁護士を介した交渉:双方に代理人弁護士を立て、売却条件を書面で取り決める方法。費用は1件あたり着手金10万〜30万円程度です
- 委任状の活用:配偶者が遠方にいる場合、公証人の認証を受けた委任状で代理売却が可能です。委任状には物件の特定・売却価格の範囲・有効期限を明記します
- 家庭裁判所の調停:話し合いがまとまらない場合、調停委員を介して合意を目指します。札幌家庭裁判所への申立て費用は収入印紙1,200円+切手代約1,000円と低額です
委任状を用いた売却の場合、実印と印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)が必要になります。別居中の配偶者に郵送で手配をお願いするケースが多いですが、相手が応じない場合は調停を検討します。ワケあり物件の売却についてはこちらも参考にしてください。
相続不動産の売却と配偶者居住権の関係
2020年4月に施行された配偶者居住権の制度と、2024年4月に義務化された相続登記の2つが、相続不動産の売却に大きく影響しています。
配偶者居住権が設定された不動産は売れるのか
配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、相続開始時に住んでいた建物に無償で住み続けられる権利です。遺産分割や遺言によって設定されます。
配偶者居住権が設定された不動産は、所有権自体は他の相続人が取得できますが、居住権が消滅するまで自由に使用・売却することが困難です。
- 居住権の存続期間:原則として配偶者の終身。ただし遺産分割協議で期間を定めることも可能です
- 売却への影響:居住権付きの不動産は買主にとって利用制限があるため、通常の評価額から居住権の価値(一般的に建物評価額の30%〜50%程度)を差し引いた価格になります
- 居住権の消滅:配偶者の死亡・合意による放棄・居住権の期間満了のいずれかで消滅します
配偶者居住権は登記が必要であり、登記されている場合は第三者にも対抗できます。売却を検討する際は、まず登記簿で居住権の有無を確認してください。
相続登記と共有持分の整理手順
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請が必要になりました。正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象となります。
相続不動産を売却するには、まず相続登記を完了させる必要があります。手順は以下のとおりです。
- 遺産分割協議:相続人全員で不動産の分割方法を決め、協議書を作成します。全員の署名・実印・印鑑証明書が必要です
- 相続登記の申請:法務局に申請します。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。評価額2,000万円の不動産なら8万円になります
- 共有持分の整理:相続人が複数いる場合、誰の名義で登記するかを決めます。売却前提であれば代表者1名にまとめるか、全員の共有名義で登記する方法があります
相続した不動産の売却については、相続物件の売却について詳しくはこちらで当社の対応実績もご紹介しています。
配偶者が同意しない場合の対処法
売却の必要性を感じていても、配偶者が同意してくれないケースは珍しくありません。段階的に対処法を検討していくことが大切です。
話し合いで解決するためのポイント
まずは冷静な話し合いの場を設けることが第一歩です。以下の点を整理して伝えると合意が得やすくなります。
- 売却の理由を明確にする:住宅ローンの負担軽減・住み替え・資産整理など、具体的な目的を共有します
- 現在の不動産価値を示す:不動産会社の査定書を取得し、客観的な数字で話し合います。札幌市内のマンションの場合、築20年で新築時の約50%〜65%が目安です
- 売却後の資金計画を提示する:売却代金の使い道や住み替え先の計画を具体的に示すと、配偶者の不安が軽減されます
- 第三者の同席を検討する:不動産会社やファイナンシャルプランナーなど中立的な立場の専門家に同席してもらう方法もあります
当社の経験では、売却に反対するご家族の約7割は「売却後の生活への不安」が主な理由です。具体的な資金計画と住み替え先を提示することで、多くのケースで合意に至っています。
家庭裁判所の調停を利用する方法
話し合いで解決しない場合、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
- 夫婦関係調整調停:離婚を前提とする場合に利用します。財産分与の一環として不動産の処分を話し合います
- 共有物分割調停:共有名義の不動産について、共有関係の解消を求める調停です。調停不成立の場合は訴訟(共有物分割請求)に移行できます
調停では裁判官と調停委員2名が間に入り、双方の主張を聞きながら合意点を探ります。調停の期間は一般的に3〜6ヶ月、月1回程度のペースで期日が設定されます。
共有物分割請求訴訟に進んだ場合、裁判所が競売を命じる可能性もありますが、競売価格は市場価格の6割〜7割程度に下がることが多く、双方にとって不利になります。できる限り調停段階での合意を目指すのが望ましいです。
札幌で配偶者間の不動産売却を進める際の実務知見
当社は札幌を拠点に多くの配偶者間の売却案件を扱ってきました。地域特有の事情を踏まえた実務知見をお伝えします。
札幌家庭裁判所での調停の流れ
札幌家庭裁判所は地下鉄沿線からのアクセスが良く、道内では最も調停件数の多い裁判所です。調停の流れは以下のとおりです。
- 申立て:必要書類(申立書・戸籍謄本・不動産登記簿謄本・固定資産評価証明書)を提出します
- 第1回期日:申立てから約1〜2ヶ月後に指定されます。申立人と相手方は別室で待機し、交互に調停室に入ります
- 協議:通常3〜5回の期日で合意を目指します。不動産の評価額について争いがある場合、裁判所が不動産鑑定を命じることもあります
- 成立・不成立:合意に至れば調停調書が作成され、確定判決と同じ効力を持ちます
札幌家庭裁判所の調停は月1〜2回のペースで進行し、解決まで平均4〜6ヶ月程度です。冬季は申立て件数がやや増える傾向があります。
冬季の売却活動と合意形成のタイミング
北海道では冬季の不動産市場に独特の特性があります。配偶者間の合意形成と売却活動のタイミングを合わせることが重要です。
- 11月〜2月:積雪により内覧希望者が減少し、売却活動は鈍化します。この時期は合意形成や書類準備に充てるのが効率的です
- 3月〜4月:転勤や進学シーズンで需要が高まります。JR沿線や市街地エリアの物件は、この時期に成約価格が5%〜10%高くなる傾向があります
- 5月〜10月:安定した売却活動が可能な時期です。道内全域で内覧や現地確認がしやすくなります
北海道特有の課題として、広大な土地の共有名義問題があります。郊外の土地は面積が大きく評価額の算定が難しいため、配偶者間で価格の認識が合わないケースが見られます。こうした場合は不動産鑑定士による正式な鑑定評価を取得することをお勧めします。
トラブルを防ぐために事前に準備すべきこと
配偶者が関わる不動産売却をスムーズに進めるには、事前準備が欠かせません。以下のチェックリストを参考にしてください。
売却前に確認すべき書類と名義の状態
- 登記簿謄本(登記事項証明書):法務局で取得できます。名義人・持分割合・抵当権の有無を確認します。取得費用は1通600円です
- 住宅ローン残高証明書:金融機関から取得します。残債と売却見込価格を比較し、オーバーローンかどうかを確認します
- 固定資産税評価証明書:市区町村の窓口で取得します。相続登記の登録免許税の計算にも使用します
- 婚姻関係の確認:離婚協議中の場合、戸籍謄本で現在の婚姻状況を確認します
- 委任状(必要な場合):配偶者が立ち会えない場合に備え、公証人の認証を受けた委任状を準備します。公証役場の手数料は5,500円です
これらの書類は取得に時間がかかるものもあるため、売却を検討し始めた段階で早めに手配することをお勧めします。
不動産会社への相談で押さえるべきポイント
配偶者間のトラブルを含む売却案件は、経験のある不動産会社に相談することが解決の近道です。
- 共有名義・離婚案件の取扱実績:こうした案件は通常の売却と異なる配慮が必要です。実績のある会社を選びましょう
- 弁護士・司法書士との連携体制:法的な手続きが必要になることが多いため、専門家と連携できる体制があるかを確認します
- 査定の根拠:配偶者間で価格認識を共有するために、周辺の成約事例に基づいた客観的な査定が重要です
当社では札幌市内の共有名義・離婚に伴う売却案件を数多く扱っており、弁護士・司法書士とも連携して対応しております。まずはお気軽にご相談ください。無料査定・ご相談はこちらからお問い合わせいただけます。
よくある質問
Q: 夫の単独名義でも妻の同意がないと自宅を売却できないのですか?
A: 法律上、単独名義であれば所有者の判断で売却は可能です。しかし、婚姻中の居住用財産の場合、民法の規定や判例から配偶者の同意を求められるのが実務上の通例です。
不動産会社や司法書士も、トラブル防止のために配偶者の同意確認を行います。同意なく売却を進めると、後に損害賠償請求や売買契約の取消しにつながるリスクがあります。
Q: 離婚前に共有名義の不動産を売却するにはどのような手続きが必要ですか?
A: 共有者全員(夫婦双方)の合意が必要です。まず財産分与の方針を取り決め、売却代金の分配割合を書面で合意したうえで、売買契約に双方が署名・押印します。
住宅ローンが残っている場合は、売却代金でローンを完済することが前提です。オーバーローンの場合は金融機関と任意売却の交渉が必要になることもあります。
Q: 配偶者が売却に同意してくれない場合はどうすればよいですか?
A: 段階的な対処をお勧めします。まず査定書を基にした冷静な話し合いを行い、合意できない場合は家庭裁判所の調停を利用します。調停でも解決しない場合は、共有物分割請求訴訟という法的手段があります。
ただし訴訟に進むと競売となる可能性があり、市場価格より大幅に低い金額での売却になりがちです。できる限り話し合いや調停での解決を目指すのが双方にとって有利です。
Q: 相続した不動産を売却する際に配偶者居住権はどう影響しますか?
A: 配偶者居住権が登記されている不動産は、居住権が消滅するまで買主の利用が制限されるため、売却価格が通常の評価額より30%〜50%程度低くなるのが一般的です。
売却を前提とする場合、遺産分割の段階で配偶者居住権を設定しない、または期間を限定する方法が考えられます。すでに設定済みの場合は、配偶者の合意による放棄手続きが必要になります。
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