「自宅を売却したいが、配偶者の同意は必要なのか」というご相談は、当社でも年間を通じて多くいただきます。
結論から申し上げると、不動産の名義や用途によって同意の要否は異なります。共有名義なら原則として全員の合意が必要ですし、単独名義でも居住用財産であれば配偶者の同意が求められるケースがあります。
この記事では、名義の種類別に同意が必要かどうかを整理したうえで、離婚協議中や相続時など実際に多いケースの対処法を、札幌での実務経験をもとに解説します。
配偶者の同意が必要かどうかは、大きく分けて3つのパターンで判断できます。ご自身の状況がどれに当てはまるか確認してみてください。
夫婦で住宅ローンを組んだ場合や、共同で購入した場合は共有名義になっていることが多いです。共有名義の不動産を全体売却するには共有者全員の合意が必要です。
民法第251条により、共有物の処分(売却)は共有者全員の同意がなければ行えません。持分割合が夫7割・妻3割であっても、妻の同意なしに全体を売却することはできません。
なお、自分の持分だけを売却することは法律上可能ですが、持分のみの買い手は限られるため、売却価格は全体の時価に対する持分割合よりも2割〜4割ほど低くなるのが一般的です。
「自分の名義だから自由に売れる」と思われがちですが、婚姻中の居住用不動産には注意が必要です。民法第761条では日常家事に関する連帯責任が定められており、自宅の売却は家族の生活基盤に直結します。
さらに重要なのが民法第762条第2項の規定です。婚姻中に取得した財産で名義が明確でないものは共有と推定されます。住宅ローンの返済に配偶者の収入が充てられていた場合、実質的な共有財産と判断される可能性があります。
実務上、不動産会社や司法書士は居住用財産の売却時に配偶者の同意確認を求めるのが通例です。同意なく進めた売却は、後にトラブルとなるリスクが高くなります。
民法には、配偶者の居住を保護するための規定があります。例えば配偶者居住権(民法第1028条)は相続時の制度ですが、婚姻中であっても裁判所が居住の保護を認めた判例があります。
特に離婚を前提としたケースでは、一方的な売却が「財産の散逸行為」と見なされ、家庭裁判所から処分禁止の仮処分が出されることもあります。札幌でも年間数十件のこうした申立てがあり、慎重な対応が求められます。
名義の形態によって、売却に必要な手続きや書類が大きく変わります。ここでは実務で押さえるべきポイントを整理します。
共有名義の不動産には、2つの売却方法があります。
当社の経験では、全体売却が最も高値で成約しやすく、成約価格は持分売却と比べて平均30%〜50%高くなる傾向があります。できる限り全員の合意を得てから進めることをお勧めします。
単独名義であっても、以下のケースでは配偶者への確認が実務上必要です。
不動産の売却手続きでは、登記簿謄本・住宅ローン残高証明書・固定資産税評価証明書などの書類を事前に取得しておくとスムーズに進みます。売却の方法と費用の詳細はこちらをご参照ください。
離婚や別居を伴う不動産売却は、感情面と法律面の両方に配慮が求められます。当社でも毎月5〜8件ほどこうしたご相談を受けており、実務的な進め方をご案内します。
離婚に伴う不動産売却では、売却を先に進めるか、離婚を先に成立させるかでかかる税金が変わります。
一般的に、住宅ローンが残っている場合は離婚前に売却してローンを完済する方がトラブルが少ないとされています。札幌市内の戸建て・マンションでは、売却期間として平均3〜6ヶ月を見込む必要がありますので、早めの着手をお勧めします。
別居中で直接の話し合いが難しい場合、以下の方法で売却を進めることができます。
委任状を用いた売却の場合、実印と印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)が必要になります。別居中の配偶者に郵送で手配をお願いするケースが多いですが、相手が応じない場合は調停を検討します。ワケあり物件の売却についてはこちらも参考にしてください。
2020年4月に施行された配偶者居住権の制度と、2024年4月に義務化された相続登記の2つが、相続不動産の売却に大きく影響しています。
配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、相続開始時に住んでいた建物に無償で住み続けられる権利です。遺産分割や遺言によって設定されます。
配偶者居住権が設定された不動産は、所有権自体は他の相続人が取得できますが、居住権が消滅するまで自由に使用・売却することが困難です。
配偶者居住権は登記が必要であり、登記されている場合は第三者にも対抗できます。売却を検討する際は、まず登記簿で居住権の有無を確認してください。
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請が必要になりました。正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象となります。
相続不動産を売却するには、まず相続登記を完了させる必要があります。手順は以下のとおりです。
相続した不動産の売却については、相続物件の売却について詳しくはこちらで当社の対応実績もご紹介しています。
売却の必要性を感じていても、配偶者が同意してくれないケースは珍しくありません。段階的に対処法を検討していくことが大切です。
まずは冷静な話し合いの場を設けることが第一歩です。以下の点を整理して伝えると合意が得やすくなります。
当社の経験では、売却に反対するご家族の約7割は「売却後の生活への不安」が主な理由です。具体的な資金計画と住み替え先を提示することで、多くのケースで合意に至っています。
話し合いで解決しない場合、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
調停では裁判官と調停委員2名が間に入り、双方の主張を聞きながら合意点を探ります。調停の期間は一般的に3〜6ヶ月、月1回程度のペースで期日が設定されます。
共有物分割請求訴訟に進んだ場合、裁判所が競売を命じる可能性もありますが、競売価格は市場価格の6割〜7割程度に下がることが多く、双方にとって不利になります。できる限り調停段階での合意を目指すのが望ましいです。
当社は札幌を拠点に多くの配偶者間の売却案件を扱ってきました。地域特有の事情を踏まえた実務知見をお伝えします。
札幌家庭裁判所は地下鉄沿線からのアクセスが良く、道内では最も調停件数の多い裁判所です。調停の流れは以下のとおりです。
札幌家庭裁判所の調停は月1〜2回のペースで進行し、解決まで平均4〜6ヶ月程度です。冬季は申立て件数がやや増える傾向があります。
北海道では冬季の不動産市場に独特の特性があります。配偶者間の合意形成と売却活動のタイミングを合わせることが重要です。
北海道特有の課題として、広大な土地の共有名義問題があります。郊外の土地は面積が大きく評価額の算定が難しいため、配偶者間で価格の認識が合わないケースが見られます。こうした場合は不動産鑑定士による正式な鑑定評価を取得することをお勧めします。
配偶者が関わる不動産売却をスムーズに進めるには、事前準備が欠かせません。以下のチェックリストを参考にしてください。
これらの書類は取得に時間がかかるものもあるため、売却を検討し始めた段階で早めに手配することをお勧めします。
配偶者間のトラブルを含む売却案件は、経験のある不動産会社に相談することが解決の近道です。
当社では札幌市内の共有名義・離婚に伴う売却案件を数多く扱っており、弁護士・司法書士とも連携して対応しております。まずはお気軽にご相談ください。無料査定・ご相談はこちらからお問い合わせいただけます。
A: 法律上、単独名義であれば所有者の判断で売却は可能です。しかし、婚姻中の居住用財産の場合、民法の規定や判例から配偶者の同意を求められるのが実務上の通例です。
不動産会社や司法書士も、トラブル防止のために配偶者の同意確認を行います。同意なく売却を進めると、後に損害賠償請求や売買契約の取消しにつながるリスクがあります。
A: 共有者全員(夫婦双方)の合意が必要です。まず財産分与の方針を取り決め、売却代金の分配割合を書面で合意したうえで、売買契約に双方が署名・押印します。
住宅ローンが残っている場合は、売却代金でローンを完済することが前提です。オーバーローンの場合は金融機関と任意売却の交渉が必要になることもあります。
A: 段階的な対処をお勧めします。まず査定書を基にした冷静な話し合いを行い、合意できない場合は家庭裁判所の調停を利用します。調停でも解決しない場合は、共有物分割請求訴訟という法的手段があります。
ただし訴訟に進むと競売となる可能性があり、市場価格より大幅に低い金額での売却になりがちです。できる限り話し合いや調停での解決を目指すのが双方にとって有利です。
A: 配偶者居住権が登記されている不動産は、居住権が消滅するまで買主の利用が制限されるため、売却価格が通常の評価額より30%〜50%程度低くなるのが一般的です。
売却を前提とする場合、遺産分割の段階で配偶者居住権を設定しない、または期間を限定する方法が考えられます。すでに設定済みの場合は、配偶者の合意による放棄手続きが必要になります。
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