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2026/07/17

コラム

インボイス制度が個人の不動産売却に与える影響

インボイス制度が個人の不動産売却に与える影響

2023年10月に始まったインボイス制度は、不動産取引にも大きな変化をもたらしています。「自宅を売るだけなのに関係あるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

 

 

結論から言えば、居住用の自宅を売却する個人には原則として影響がありません。しかし投資用マンションやアパートなど事業用物件を売却する場合は、買主との価格交渉で不利になるケースがあります。

 

 

この記事では、物件の種類ごとにインボイス制度の影響を場合分けし、2029年までの経過措置スケジュールや手取り額シミュレーションまで詳しく解説します。

 

 

 

インボイス制度の基本と不動産売却との関係

 

まずはインボイス制度の仕組みと、不動産取引における消費税の基本を整理しましょう。

 

 

 

インボイス制度の仕組みを簡潔に整理

 

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存を義務づける仕組みです。課税事業者が仕入税額控除を適用するには、売主側が発行するインボイスが欠かせません。

 

 

インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」として登録した課税事業者のみです。年間売上1,000万円以下の免税事業者は、登録しない限りインボイスを発行できません。

 

 

 

不動産取引で消費税がかかる場合・かからない場合

 

不動産売却において消費税の課税・非課税は、物件の種類と売主の立場によって異なります。

  • 土地の売却:個人・法人を問わず常に非課税。インボイス制度の影響はありません
  • 居住用建物の売却(個人):事業に該当しないため課税対象外。影響なし
  • 事業用・投資用建物の売却(個人):課税売上に該当する可能性があり、インボイス制度の影響を受ける場合があります
  • 法人が売主の場合:建物部分は原則として消費税の課税対象

このように、個人の不動産売却でインボイス制度が関係するかどうかは「何を・どんな立場で売るか」によって大きく異なります。

 

 

 

自宅売却の個人はインボイス登録不要な理由

 

「自宅を売るのにインボイス登録が必要なのでは」と心配される方がいますが、一般的にその必要はありません。

 

 

 

土地は非課税・建物も免税事業者なら影響なし

 

消費税法第6条および別表第一により、土地の譲渡は非課税取引と定められています。インボイス制度は消費税の仕入税額控除に関する制度ですので、非課税取引である土地の売却には一切関係しません。

 

 

建物部分については、消費税法上「事業として」行う資産の譲渡が課税対象です。個人が自宅として使っていたマンションや戸建てを売却する行為は、一般的に「事業」には該当しません。

 

 

 

居住用マンション売却で心配しなくてよいケース

 

以下に該当する方は、インボイス制度を気にせず売却を進められます。

  • 自宅マンションや戸建てを売る個人:事業性がなく課税対象外
  • 相続した実家を売却する個人:居住用であれば同様に対象外
  • 年間課税売上が1,000万円以下の免税事業者:そもそも消費税の納税義務なし

札幌市内でも居住用マンションの売却は多くの取引が行われていますが、ほとんどのケースでインボイスの心配は不要です。マンション売却の基本的な流れや費用については、マンション売却の流れと費用をご覧ください。

 

 

 

投資用・事業用物件の売却で影響が出るケース

 

一方で、収益物件や事業用不動産を売却する個人は注意が必要です。ここからがインボイス制度の影響を受ける本題になります。

 

 

 

課税事業者の買主から値下げ交渉を受けるリスク

 

投資用アパートや事業用テナントビルの建物部分には消費税がかかります。買主が課税事業者の場合、本来であれば建物にかかる消費税を仕入税額控除として差し引けます。

 

 

しかし、売主がインボイス未登録の免税事業者だと、買主は仕入税額控除を受けられません。その結果、買主から「控除できない消費税分を値引きしてほしい」と交渉されるリスクが生じます。

 

 

例えば建物価格が2,000万円の場合、消費税は10%で200万円です。買主がこの200万円を控除できないとなると、実質的な負担増を避けるため100万円〜200万円程度の値引きを求めてくる可能性があります。

 

 

 

免税事業者のまま売却する場合の手取り額への影響

 

免税事業者の個人が投資用物件を売却する際の影響を整理します。

  • 買主が個人(非課税事業者)の場合:仕入税額控除を必要としないため影響は限定的
  • 買主が課税事業者(法人など)の場合:控除不可分の値引き交渉が発生しやすい
  • 経過措置期間中の場合:一定割合の控除が認められるため影響は緩和される

収益物件の売却を検討されている方は、買主の属性によって手取り額が変わる可能性があることを事前に把握しておくことが重要です。収益物件の売却についてはこちらで詳しく解説しています。

 

 

 

経過措置の段階的縮小と手取り額シミュレーション

 

インボイス制度には激変緩和のための経過措置が設けられています。この経過措置は段階的に縮小されるため、売却時期によって手取り額が変わります。

 

 

 

2026年〜2029年の控除率タイムライン

 

免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除の経過措置は、以下のスケジュールで縮小されます。

  • 2023年10月〜2026年9月:仕入税額相当額の80%を控除可能
  • 2026年10月〜2029年9月:仕入税額相当額の50%を控除可能
  • 2029年10月以降:経過措置終了、控除率0%

つまり2026年10月以降は、買主が控除できる割合が80%から50%に下がります。買主の実質負担が増える分だけ、値引き交渉の圧力も強まると考えられます。

 

 

 

売却価格3,000万円のケースで手取り差を試算

 

建物価格3,000万円(税抜)の投資用物件を、免税事業者の個人が課税事業者の買主に売却する場合をシミュレーションします。消費税額は300万円です。

  • 2026年9月まで(80%控除):買主は300万円×80%=240万円を控除可能。控除不可額は60万円。値引き交渉額の目安は約60万円
  • 2026年10月〜2029年9月(50%控除):買主は300万円×50%=150万円を控除可能。控除不可額は150万円。値引き交渉額の目安は約150万円
  • 2029年10月以降(0%控除):買主は控除ゼロ。控除不可額は300万円。値引き交渉額の目安は最大300万円

同じ物件を売るタイミングだけで、手取り額に最大240万円もの差が生じる計算です。経過措置が段階的に縮小される2026年・2029年の節目は、売却時期を検討するうえで非常に重要なポイントとなります。

 

 

 

札幌の収益物件売却とインボイスの注意点

 

札幌の不動産市場には、インボイス制度の影響をより受けやすい特有の構造があります。

 

 

 

道外投資家が買主に多い札幌市場の特徴

 

札幌の収益物件市場では、東京や大阪など道外の投資家が買主となるケースが多くみられます。北海道の利回りの高さに注目した法人投資家の参入が増えており、これらの買主の多くは課税事業者です。

 

 

2026年現在、札幌市街地エリアの中古一棟アパートの表面利回りは平均7%〜9%前後で推移しており、道内外から投資需要が集まっています。地下鉄沿線やJR沿線の物件は特に人気が高く、法人の買い手が競合する場面も珍しくありません。

 

 

こうした市場環境では、売主の約6〜7割が個人(免税事業者)であるのに対し、買主の過半数が課税事業者という構図が生まれやすく、インボイス未登録がそのまま価格交渉上の弱点になり得ます。

 

 

 

課税事業者の買主との価格交渉で不利にならない対策

 

札幌で投資用物件を売却する個人が、インボイス制度を理由に不利な交渉を受けないための対策を整理します。

  • 売却時期を経過措置の期限から逆算する:2029年10月前に売却すれば買主の控除が一部残り、値引き幅を抑えられます
  • 個人の買主(非課税事業者)も候補に含める:仕入税額控除が不要な買主であればインボイスの有無は問題になりません
  • 適格請求書発行事業者への登録を検討する:登録すれば買主は全額控除可能。ただし売主側に消費税の納税義務が発生するため、税理士と相談のうえ判断してください
  • 不動産会社に買主の属性を事前確認してもらう:買主が課税事業者かどうかで交渉戦略が変わります

北海道内の取引に精通した不動産会社に相談することで、買主の属性に応じた最適な売却プランを立てやすくなります。

 

 

 

仲介手数料や諸費用へのインボイス制度の影響

 

インボイス制度は物件価格だけでなく、売却時に発生する諸費用にも関係します。売主が負担する費用への影響を確認しましょう。

 

 

 

仲介手数料の消費税は売主負担に変化があるか

 

不動産仲介会社は一般的に課税事業者であり、適格請求書発行事業者として登録しています。そのため仲介手数料にかかる消費税10%は従来どおり発生し、インボイス制度による変化はありません。

 

 

売却価格が3,000万円の場合、仲介手数料の上限は約105万6,000円(税込)です。この金額はインボイス制度の前後で変わるものではありません。

 

 

 

司法書士報酬など諸費用への波及

 

売却時に発生する諸費用のうち、消費税がかかる主なものは以下のとおりです。

  • 司法書士報酬:抵当権抹消登記などで3万円〜5万円程度(税別)。課税事業者の司法書士であればインボイス発行可能
  • 測量費用:土地の境界確定が必要な場合、30万円〜50万円程度(税別)
  • 建物解体費用:古家付き土地の売却では100万円〜300万円程度(税別)

売主が課税事業者で消費税の申告を行う場合は、これらの費用に対するインボイスの受領・保存が必要です。免税事業者の個人であれば、仕入税額控除を行わないため実務上の影響はほとんどありません。

 

 

売却にかかる費用の全体像については、売却にかかる費用の詳細で詳しくまとめています。

 

 

 

個人が不動産売却前に確認すべきチェックリスト

 

最後に、インボイス制度を踏まえて個人が不動産を売却する前に確認すべきポイントを物件種別ごとに整理します。

 

 

 

売却物件の種類別に必要な対応を整理

  • 自宅(居住用マンション・戸建て):インボイス登録不要。通常どおり売却手続きを進めて問題ありません
  • 相続した居住用物件:被相続人が住んでいた物件であれば原則として影響なし。ただし賃貸に出していた場合は次の項目を確認
  • 投資用マンション・アパート(1室〜数室):年間課税売上1,000万円以下なら免税事業者。買主が課税事業者の場合は値引き交渉の可能性を想定
  • 一棟アパート・収益ビル:建物価格が大きいため影響額も大。経過措置の残り期間と買主属性を踏まえた売却戦略が重要
  • 事業用テナント・店舗:課税取引に該当するケースが多く、インボイス登録の要否を税理士に相談することを推奨

 

 

 

税理士・不動産会社への相談ポイント

 

インボイス制度が関係する可能性がある場合は、以下のポイントを専門家に相談してください。

  • 自身の課税事業者・免税事業者の判定:過去2年間の課税売上高が1,000万円を超えていないか確認
  • 適格請求書発行事業者の登録メリット・デメリット:登録すると消費税の納税義務が発生するため、手取り額への影響を試算
  • 売却時期の最適化:経過措置が50%に下がる2026年10月、0%になる2029年10月を意識した売却計画
  • 買主候補の属性:課税事業者の買主が多い物件タイプかどうかを不動産会社に確認

札幌で不動産売却をお考えの方は、まず現在の状況を専門家に相談することが第一歩です。無料査定・売却のご相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

よくある質問

 

 

 

Q: 自宅マンションを売却する個人でもインボイス登録は必要ですか?

 

A: 居住用の自宅マンションを売却する場合、一般的にインボイス登録は不要です。土地部分は消費税の非課税取引であり、建物部分も個人の居住用資産の売却は事業に該当しないため課税対象外となります。

 

 

そのため、多くの個人のお客様はインボイス制度を意識せずに売却を進めていただけます。

 

 

 

Q: インボイス制度で不動産の仲介手数料は値上がりしますか?

 

A: 仲介手数料自体がインボイス制度によって値上がりすることは一般的にありません。不動産仲介会社は多くの場合、課税事業者としてインボイスを発行できるため、従来どおり消費税10%を含む手数料の請求となります。

 

 

売主が免税事業者であっても、仲介手数料の金額や消費税率に影響はありません。

 

 

 

Q: 免税事業者のまま投資用物件を売ると買主から値引きされますか?

 

A: 買主が課税事業者の場合、値引き交渉を受ける可能性があります。売主がインボイスを発行できないと、買主は建物にかかる消費税の仕入税額控除を受けられないためです。

 

 

ただし2029年9月までは経過措置により一部控除が認められるため、影響は段階的に拡大します。売却時期と買主の属性を考慮した戦略が大切です。

 

 

 

Q: インボイス経過措置が終わる2029年10月以降、個人の不動産売却への影響はどう変わりますか?

 

A: 2029年10月以降は経過措置が完全に終了し、免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除は0%になります。課税事業者の買主は消費税分を一切控除できなくなるため、値引き交渉の圧力が最も強まると考えられます。

 

 

投資用・事業用物件の売却を検討されている方は、この期限を意識した売却計画を税理士や不動産会社と早めに相談されることをおすすめします。

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