収益物件の売却を検討しているオーナー様にとって、税金の負担額は最も気になるポイントではないでしょうか。
投資用不動産は、マイホームとは異なり減価償却の影響で譲渡所得が大きくなりやすく、想定以上の税負担が発生するケースがあります。
この記事では、札幌の収益物件を売却した場合にかかる税金の仕組みを整理し、具体的な数値例を用いたシミュレーションをご紹介します。売却タイミングや所有形態による税額の違いまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
収益物件を売却して利益が出た場合、主に3種類の税金がかかります。まずは全体像を把握しておきましょう。
収益物件の売却益に対してかかる税金は、以下の3つです。
これらは給与所得などとは分けて計算する「分離課税」方式が適用されます。税率は所有期間によって大きく異なり、この点が売却タイミングの判断に直結します。
譲渡所得の計算では、売却価格からさまざまな費用を差し引くことができます。収益物件で認められる主な費用は以下のとおりです。
これらの「譲渡費用」を漏れなく計上することが、税額を適正に抑えるための第一歩です。売却にかかる費用の詳細はこちらでも解説しています。
収益物件の売却で最も見落としやすいのが、減価償却費の影響です。毎年の確定申告で経費にしてきた減価償却費が、売却時には税負担を増やす方向に働きます。
譲渡所得は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」で計算されます。ここで重要なのが「取得費」の考え方です。
収益物件の場合、建物部分の取得費は購入価格そのものではなく、購入価格から減価償却費の累計額を差し引いた金額(簿価)になります。つまり、長年にわたって減価償却を行ってきた物件ほど取得費が小さくなり、結果として譲渡所得が大きくなるのです。
たとえば建物を1,500万円で購入し、累計で800万円の減価償却を行った場合、建物の取得費は700万円として計算されます。減価償却で毎年の所得税を抑えてきた分が、売却時にまとめて課税される構造といえます。
減価償却のスピードは建物の構造によって異なります。主な耐用年数は以下のとおりです。
木造アパートはRC造に比べて耐用年数が短いため、毎年の償却額が大きくなります。その結果、同じ築年数でも木造の方が売却時の取得費が小さくなり、譲渡所得が膨らみやすい傾向があります。
札幌では築20年前後の木造アパートの売買が活発ですが、このような物件は減価償却がかなり進んでいるため、売却前のシミュレーションが特に重要です。
不動産の売却益にかかる税率は、所有期間が5年を超えるかどうかで約2倍の差があります。収益物件の売却時期を判断するうえで、最も重要なポイントです。
所有期間の判定には特有のルールがあります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判定されます。
たとえば2021年4月に購入した物件を2026年5月に売却した場合、実際の所有期間は5年1か月です。しかし、2026年1月1日時点では4年9か月しか経過していないため「短期譲渡」に分類されます。
この場合、長期譲渡として扱われるには2027年1月以降まで待つ必要があります。わずか数か月の差で税率が大きく変わるため、売却時期の見極めが欠かせません。
短期譲渡と長期譲渡の税率は以下のとおりです。
たとえば譲渡所得が1,000万円の場合、短期では約396万円、長期では約203万円の税負担となります。その差は約193万円にもなり、売却タイミングひとつで手取り額が大きく変わることがわかります。
ここからは、札幌の市場相場を参考にした具体的なシミュレーションをご紹介します。ご自身の物件に近い条件で、税額の目安を把握してみてください。
地下鉄沿線の単身向けRCマンション1棟を想定します。
譲渡所得は「2,800万円 −(1,000万円+861万円)− 100万円 = 839万円」となります。
長期譲渡税率20.315%を適用すると、税額は約170万円です。もし減価償却の影響を考慮せず取得費を2,500万円で計算していた場合、譲渡所得は200万円・税額は約41万円と試算してしまい、実際との差は約129万円にもなります。
JR沿線エリアの木造アパートを想定します。
譲渡所得は「1,600万円 −(800万円+273万円)− 60万円 = 467万円」です。
長期譲渡税率を適用した税額は約95万円となります。木造は減価償却のスピードが速いため、取得費が大幅に減少し、売却価格が購入価格を下回っていても譲渡所得が発生する点に注意が必要です。
収益物件の売却についてさらに詳しくはこちらのページでもご案内しています。
収益物件を法人で所有している場合と個人で所有している場合では、売却時の課税方式がまったく異なります。札幌で複数の投資用物件を保有するオーナー様にとって、この違いは重要な判断材料です。
個人の長期譲渡(約20%)に比べると、法人の実効税率(約30〜34%)は高くなります。しかし法人の場合、他の事業で赤字があれば売却益と損益通算が可能です。
一方、短期譲渡の場合は個人の税率が約40%となるため、法人で保有している方が税負担を抑えられるケースがあります。
法人化が有利になりやすいのは、以下のようなケースです。
ただし法人設立・維持にはコストがかかり、税理士報酬や法人住民税の均等割(赤字でも年間約7万円)なども考慮が必要です。物件の規模や今後の投資計画に応じて、専門家に相談されることをおすすめします。
収益物件の売却にあたっては、マイホーム向けの3,000万円特別控除は原則として使えません。しかし、投資用不動産に適用できる特例もあります。
一定の条件を満たす事業用資産を売却し、新たに事業用資産を取得する場合、譲渡所得の最大80%を繰り延べできる特例があります。
この特例は「非課税」ではなく「繰り延べ」である点に注意が必要です。将来、買換え先の物件を売却する際に課税されます。北海道内で物件の入れ替えを検討しているオーナー様にとっては有力な選択肢です。
相続で取得した収益物件の場合、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」が利用できます。相続税の申告期限から3年以内に売却することが条件です。
また、同じ年に複数の不動産を売却し、一方で損失が出ている場合は、不動産譲渡所得内での損益通算が認められます。道内に複数物件を保有している場合、売却の順序やタイミングを工夫することで税負担を軽減できる可能性があります。
相続で取得した収益物件の売却については、こちらのページもご参照ください。
収益物件を売却した翌年には、確定申告が必要になります。一般的な不動産売却と比べて、収益物件特有の準備物がありますので事前に確認しておきましょう。
確定申告の期間は、売却した翌年の2月16日から3月15日です。届出先は住所地を管轄する税務署となります。
e-Tax(電子申告)を利用すれば、税務署に出向くことなく自宅から申告が可能です。マイナンバーカードとICカードリーダー、またはスマートフォンがあれば手続きできます。
収益物件の売却で一般的に必要となる書類は以下のとおりです。
特に減価償却明細書は、取得費の計算に不可欠な書類です。毎年の確定申告で提出している償却資産台帳を保管していない場合、税理士や管轄の税務署に相談して再作成する必要があります。
書類の準備は早めに着手し、不明な点があれば税理士などの専門家に確認されることをおすすめします。
A: 減価償却費の累計額は、売却時の建物の取得費から差し引かれます。そのため、長年にわたって減価償却を行ってきた物件ほど取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなります。
たとえば建物を1,000万円で購入し累計700万円を償却済みの場合、取得費は300万円として計算されるため、売却価格との差額が大きくなり税負担が増える仕組みです。
A: 所有期間5年以下の短期譲渡では税率が約39.63%、5年超の長期譲渡では約20.315%となり、税率はほぼ2倍の差があります。
たとえば譲渡所得が500万円の場合、短期では約198万円、長期では約102万円となり、約96万円の差が生じます。売却年の1月1日時点で判定される点にもご注意ください。
A: 収益物件で利用できる主な特例として、事業用資産の買換え特例(譲渡所得の最大80%繰り延べ)や、相続物件の場合の取得費加算の特例があります。
なお、マイホーム売却の3,000万円特別控除は投資用不動産には原則として適用されません。特例の適用には細かい条件がありますので、税理士への相談をおすすめします。
A: 最も重要なのは、減価償却明細書(償却資産台帳)を事前に準備しておくことです。この書類がないと正確な取得費が計算できず、税額を誤る原因になります。
申告期限は売却翌年の3月15日です。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が発生する場合がありますので、早めの準備を心がけてください。
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