親御様が施設に入るのに合わせて、ご実家の売却を考える方が増えています。ただ、任意後見契約を結んでいても、それだけで不動産を売却できるとは限りません。
この記事では、札幌で不動産売却をお手伝いしている当社が、任意後見での売却の流れを解説します。代理権目録の書き方、監督人選任までの期間、必要書類、冬前に売却を終える逆算スケジュールまでまとめています。
最初に、任意後見契約の基本と、法定後見との違いを確認します。売却できるかどうかは「効力がいつ発生するか」で大きく変わります。
任意後見契約は、ご本人の判断能力があるうちに、将来の財産管理を任せる人と内容を決めておく契約です。契約は公正証書で作成し、その内容は法務局に登記されます。
ここで大切なのは、契約を結んだだけでは効力が生じない点です。一般的に、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点で、初めて任意後見人が代理権を使えるようになります。
つまり、監督人が選ばれる前は、任意後見人として不動産を売却することはできません。売却を計画するときは、この選任手続きの期間を見込んでおく必要があります。
法定後見は、判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選ぶ制度です。両者の主な違いは次のとおりです。
任意後見は自由度が高い一方、契約に書いていないことはできません。この点が次の章の代理権目録の話につながります。
任意後見人ができることは、契約書に添付する「代理権目録」で決まります。ここに売却の記載がないと、いざというときに売却できない事態になりかねません。
当社にも、契約書に「預貯金の管理」しか書かれておらず、ご自宅の売却が進められないというご相談が寄せられます。よくあるトラブルは次のようなものです。
このような場合、結局は法定後見の申立てを検討することになり、売却までに数か月の遅れが出ることもあります。
代理権目録は、公証役場の書式を使い、項目にチェックを入れたり条文形式で書いたりします。不動産売却を見すえる場合の記載例は次のとおりです(あくまで一例です)。
契約前に、次の点をチェックリストとしてご確認ください。
記載内容は、一般的に公証人や司法書士・弁護士と相談しながら決めます。当社でも、売却の実務の目線から気になる点をお伝えできます。
任意後見契約には3つの類型があり、どれを選ぶかで売却に着手できる時期が変わります。ご家族の状況に合わせて考えることが大切です。
移行型は、委任契約に売却の代理権が入っていれば、判断能力があるうちから売却の準備を進めやすい類型です。ただし判断能力が低下した後は、監督人選任を申し立てるのが一般的です。
申立てから監督人の選任までは、多くの場合1〜3か月程度かかります。書類の不備や親族間の調整があると、さらに延びることもあります。
申立てには、次のような書類と費用が一般的に必要です。
診断書の取得や書類集めに2〜4週間ほどかかることもあります。売却を急ぐ場合は、この準備期間も計画に入れておきましょう。
ここからは、監督人の選任後に任意後見人が不動産を売却する実務の流れを、時系列で解説します。
売却の方法や費用の全体像は、不動産売却の方法と費用でも詳しくご紹介しています。
決済当日に向けて、一般的に次の書類を準備します。発行から3か月以内のものを求められることが多いため、取得の時期に注意します。
当社がご相談を受けた事例(内容は一部変えています)をご紹介します。80代のお母様が施設に入所し、娘様が移行型の任意後見人として、築35年ほどの戸建てを売却されたケースです。
申立てから監督人の選任まで約2か月、査定から決済まで約4か月かかりました。代理権目録に売却と登記申請の記載があったため、手続きは円滑に進みました。
札幌では、季節が売却の進めやすさに大きく影響します。施設入所後に空き家となるご自宅は、根雪の前に売却を終えるのが理想です。
札幌の年間降雪量は平年で約4.8mにのぼり、12月から3月ごろまで雪に覆われます。住む人がいない家には、次のようなリスクがあります。
北海道の空き家の管理は、本州よりも手間と費用がかかります。空き家の売却については札幌の空き家・空き地の売却もあわせてご覧ください。
11月中の決済を目標にした場合の逆算スケジュールの例です。地下鉄沿線やJR沿線の物件は比較的早く売れる傾向がありますが、余裕を持った計画をおすすめします。
| 時期 | 主な手続き |
|---|---|
| 3〜4月 | 専門家へ相談、診断書の取得、申立て書類の準備 |
| 4〜5月 | 札幌家庭裁判所へ監督人選任を申立て、並行して机上査定 |
| 6〜7月 | 監督人の選任・登記、訪問査定、媒介契約 |
| 7〜9月 | 販売活動、売買契約(雪のない時期に内覧を集中) |
| 10〜11月 | 決済・引渡し、監督人への報告 |
すでに冬を迎えている場合は、まず水抜きや巡回などの冬季管理を手配します。そのうえで、申立てと査定を冬の間に進めると、春の販売開始に間に合いやすくなります。
不動産売却の備えとしては、任意後見のほかに法定後見や家族信託もあります。売却のしやすさという視点で3つの制度を比べてみます。
| 項目 | 任意後見 | 法定後見 | 家族信託 |
|---|---|---|---|
| 始められる時期 | 判断能力があるうちに契約 | 判断能力の低下後 | 判断能力があるうちに契約 |
| 担い手 | 本人が選ぶ | 家庭裁判所が選ぶ | 本人が選ぶ(受託者) |
| 自宅売却の裁判所許可 | 一般的に不要 | 一般的に必要 | 不要 |
| 継続的な費用 | 監督人報酬 月1〜3万円程度 | 専門職後見人の報酬 月2〜6万円程度 | 原則なし(設計費用は数十万円程度) |
| 柔軟性 | 契約の範囲内で高い | 低い(本人保護が最優先) | 高い |
| 売却のしやすさ | 監督人選任後なら比較的スムーズ | 許可が必要で時間がかかりやすい | 受託者の判断で進めやすい |
費用の金額は、家庭裁判所の目安や事務所によって異なります。あくまで一般的な目安としてご覧ください。
どの制度にもメリットと注意点があり、組み合わせて使うこともあります。戸建ての売却を見すえた準備は、札幌の戸建て売却のページもご参考ください。
最後に、任意後見人として不動産を売却するときに気をつけたいポイントを整理します。ご本人の利益を守ることが何より大切です。
任意後見人は、ご本人の利益のために行動する義務を負っています。相場より大きく安く売ると、監督人から説明を求められたり、後で親族間のトラブルになったりするおそれがあります。
次の点を意識して、根拠ある価格で売却を進めましょう。
任意後見での売却は、法律の手続きと不動産の実務が重なります。法律面は司法書士や弁護士、価格や販売の面は不動産会社と、早い段階で連携しておくと安心です。
当社は札幌市内や道内の市街地エリアを中心に、後見が関わる売却のご相談にも対応しています。査定書は監督人へのご説明にも使えるよう、根拠を明示して作成します。お気軽に無料査定・お問い合わせからご連絡ください。
A: 一般的に、居住用不動産の売却に家庭裁判所の許可が必要なのは法定後見の場合で、任意後見では不要とされています。
ただし、監督人への事前相談や報告が実務上求められます。契約で監督人の同意を条件にしている場合もあるため、契約内容をご確認ください。
A: 任意後見契約の効力は監督人の選任後に発生するため、選任前に任意後見人として売却することはできません。
移行型で委任契約に売却の代理権が含まれ、ご本人の判断能力がある場合は、委任契約に基づいて売却できることもあります。範囲は専門家にご確認ください。
A: ご本人に判断能力があれば、売却の代理権を加えた任意後見契約を新たに結ぶ方法が考えられます。
判断能力が低下している場合は、多くの場合、法定後見の申立てを検討することになります。司法書士や弁護士にご相談ください。
A: 診断後でも、契約の内容を理解できる程度の判断能力があれば、公証人の判断で契約できる場合があります。
判断能力の低下が進んでいて契約が難しい場合は、法定後見の利用を検討するのが一般的です。
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