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2026/09/15

ブログ

成年後見人がいる場合の不動産売却|家庭裁判所の許可と期間の目安

親が認知症になり、実家を売って施設の費用にあてたい。このご相談は、札幌でも年々増えています。ところが、ご本人の判断能力が落ちている状態では、ご家族が代わりにサインをしても売買は成立しません。不動産の売買は本人の意思表示が必要で、それができない状態の契約は無効になるからです。ご家族が良かれと思って進めた手続きが、後から白紙に戻ることもあります。

この場合に使うのが成年後見の制度です。家庭裁判所が選んだ後見人が、ご本人に代わって売買契約を結びます。ただし、住んでいた自宅を売るときは、後見人がいるだけでは足りず、家庭裁判所の許可が別に必要です。この許可を取らずに売った契約は無効になります。ここが一番の落とし穴です。

ご本人にまだ判断能力が残っているうちであれば、後見の制度を使わずに、ご本人が委任状を書いて進められる場合もあります。迷ったときは、売却の相談より先に、判断能力がどの程度かを確認するところから始めてください。

そもそも成年後見人とは何をする人か

判断能力が落ちた方の代わりに、財産の管理や契約を行う人です。家庭裁判所が選びます。ご家族が申し立てをしても、選ばれるのがそのご家族とは限りません。財産が大きい場合や、親族の間で意見が割れている場合は、司法書士や弁護士など第三者の専門職が選ばれることが多くなっています。

後見・保佐・補助の3つがある

判断能力がどのくらい残っているかで、3段階に分かれます。日常の買い物も一人では難しい状態が「後見」、重要な契約だけ支援が必要な状態が「保佐」、その手前が「補助」です。不動産の売却は、どの段階でも本人だけでは進められないと考えてください。どれにあたるかは、医師の診断書をもとに家庭裁判所が判断します。

いったん始めると途中でやめられない

ここは必ず知っておいてください。後見は、自宅を売るためだけに一時的に使う制度ではありません。いったん始まると、ご本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます。専門職が選ばれた場合は、その間ずっと報酬が発生します。売却が終わったから終わり、とはならない点が、ご家族にとって一番の負担になります。

居住用不動産を売るには家庭裁判所の許可がいる

後見人が選ばれた後、自宅を売るには家庭裁判所に申し立てて許可をもらいます。ここでいう自宅とは、今住んでいる家だけではありません。施設に入る前に住んでいた家、住民票が残っている家、いずれ戻る可能性がある家も、居住用として扱われます。空き家になっているから関係ない、とは言えません。

許可が出る理由・出にくい理由

裁判所が見るのは、その売却がご本人のためになるかどうかです。施設の費用や医療費が必要で、ほかに現金がないという事情があれば、通りやすくなります。逆に、ご本人には十分な預貯金があるのに家族の都合で売りたい、という場合は通りません。売った後にご本人が住む場所が確保されているかも見られます。

売値が安すぎると許可が出ない

相場よりかなり安い価格での売却は、ご本人の財産を減らす行為とみなされ、許可が下りないことがあります。そのため、査定書や、なぜその価格になったかの根拠資料を求められます。雨漏りや傾きがあって安くせざるを得ない場合は、その状態がわかる写真や見積もりをそろえておくと説明がしやすくなります。

許可の申し立てには、売買契約書の案が必要になるのが普通です。つまり、買主が決まって条件が固まってから申し立てる流れになります。契約書には「家庭裁判所の許可が下りなければ契約は白紙に戻る」という条項を必ず入れてもらってください。

どれくらい時間がかかるか

札幌家庭裁判所に後見開始の申し立てをしてから後見人が決まるまで、早くて1か月、医師の鑑定が必要になると3か月ほどかかることがあります。そこから買主を探して条件をまとめ、さらに売却許可の申し立てをして許可が下りるまで、また1か月前後です。全体では半年前後を見ておくと安全です。

札幌では冬をまたぐと長引きやすい

札幌の場合、雪のある時期は土地の境界の確認や測量ができません。敷地の境界がはっきりしていない土地だと、雪が解ける4月以降まで作業が止まります。秋に相談を始めると、後見の手続きと雪解け待ちが重なって、実際に売れるのが翌年の初夏になることがあります。施設の費用の支払いに間に合うかどうかは、早めに逆算してください。

先に動けることもある

後見人が決まるのを待つ間にも、できることはあります。権利証や登記簿の確認、固定資産税の通知書の用意、家の中の荷物の整理、相場を調べておくことなどです。これらを先に済ませておくと、後見人が決まってからの動きが早くなります。

費用はどれくらいかかるか

申し立てのときにかかるもの

収入印紙と郵便切手で数千円から1万円程度、登記の手数料が数千円です。医師の診断書は病院によりますが数千円から1万円台、鑑定が必要になった場合は別に十万円前後かかることがあります。申し立ての書類を司法書士や弁護士に頼む場合は、その報酬が別途必要です。

後見人への報酬は毎年かかる

親族が後見人になった場合は無報酬のことも多いのですが、専門職が選ばれた場合は家庭裁判所が決めた報酬を毎年払います。金額は管理する財産の額によって変わります。不動産を売って現金が増えると、その分だけ管理する財産が増えるため、報酬が上がることがあります。これは意外と見落とされます。

費用の総額は、財産の内容と誰が後見人になるかで大きく変わります。具体的な金額は、司法書士や弁護士、または札幌家庭裁判所の窓口でご確認ください。

後見を使わずに済む場合もある

判断能力がまだ残っているうちに委任状を書く

ご本人が契約の意味を理解できる状態であれば、後見の制度を使わず、委任状で進められます。この場合、司法書士がご本人と直接会って意思を確認します。体が動かないだけで頭ははっきりしている、という方であれば、この方法が使えることが多いです。入院中でも、病室で面談して手続きを進められます。

共有の持分だけなら話が変わる

不動産が複数人の共有で、判断能力が落ちているのがそのうちの一人である場合、その方の持分については同じく後見の手続きが必要です。ただし、ほかの共有者の持分だけを売ることは理屈のうえでは可能です。もっとも、持分だけを買う人はほとんどいないため、実際には全体をまとめて売る方向で調整することになります。

元気なうちに備える方法

判断能力があるうちに、将来に備えて自分で後見人を決めておく任意後見という仕組みもあります。また、家族に財産の管理を任せる家族信託という方法もあります。どちらも、判断能力が落ちてからでは使えません。ご両親がまだお元気なうちに家の将来を話し合えるなら、選べる手が多く残ります。

売ったお金はどう扱われるか

売却代金はご本人の財産です。後見人が管理し、施設の費用や医療費にあてます。ご家族が自由に使うことはできません。家族の生活費に流用すると問題になります。後見人は毎年、家庭裁判所に収支を報告する義務があるため、使い道は必ず記録が残ります。

税金の申告もご本人の名義で行う

売却で利益が出た場合、譲渡所得の申告はご本人の名義で行います。後見人が代わりに手続きをします。住んでいた自宅であれば3,000万円の特別控除が使える場合がありますが、施設に入ってから年数が経っていると条件を外れることがあります。最終的な判断は税理士か税務署にご確認ください。

売る前にやることのまとめ

  1. ご本人の判断能力がどの程度か、かかりつけ医に確認する
  2. まだ理解できる状態なら、委任状での売却が可能かを司法書士に相談する
  3. 難しい場合は、札幌家庭裁判所に後見開始の申し立てをする
  4. 並行して、権利証・登記簿・固定資産税の通知書を集めておく
  5. おおよその相場を調べ、いくらで売れそうかを把握する
  6. 後見人が決まったら買主を探し、条件をまとめる
  7. 売買契約書に、許可が下りなければ白紙に戻る条項を入れる
  8. 家庭裁判所に売却許可を申し立て、許可を得てから決済する

いつ売り出すのがよいか

戸建て・土地

札幌では、雪が解けて敷地の全体が見える4月から6月が動きます。境界の確認や測量もこの時期でないとできません。後見の手続きに数か月かかることを考えると、年明けに申し立てを始めて、春に売り出す流れが組みやすいです。

マンション

マンションは雪の影響を受けにくいため、冬でも売り出せます。転勤や進学で動く2月から3月、秋の9月から10月に問い合わせが増えます。ただし、家庭裁判所の許可を待つ期間があるため、買主に事情を説明して待ってもらえるかどうかが鍵になります。

許可待ちの期間があることを、買主に最初から伝えておくのが大切です。後から「あと1か月待ってください」と言うと、買主が離れる原因になります。

よくあるご質問

親の家を、子どもが代わりに売ることはできますか。

ご本人の判断能力が残っていて、委任状を書ける状態であれば可能です。判断能力が落ちている場合は、家庭裁判所で後見人を選んでもらう必要があります。ご家族というだけでは代わりに契約できません。

後見人は必ず家族以外が選ばれるのですか。

必ずではありません。ご家族が選ばれることもあります。ただし、財産が大きい場合や親族の間で意見が分かれている場合は、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれることが多くなっています。誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。

自宅を売るのに、なぜ裁判所の許可までいるのですか。

住まいを失うことがご本人の生活に大きく影響するためです。後見人が独断で売ってしまわないよう、別に許可が必要とされています。許可を取らずに売った契約は無効になります。

もう施設に入っていて、家は空き家です。それでも許可がいりますか。

必要になることが多いです。住民票が残っている、いずれ戻る可能性がある、といった事情があれば居住用として扱われます。空き家だから不要とは判断しないでください。

売却が終わったら後見をやめられますか。

やめられません。後見はご本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます。専門職が後見人の場合は報酬も続きます。ここを理解したうえで申し立てるかどうかを決めてください。

手続きにどれくらいの期間がかかりますか。

後見人が決まるまで1か月から3か月、そこから買主を決めて売却許可が下りるまでさらに1か月前後です。全体で半年ほどを見ておくと安全です。札幌では雪解けを待つ分、さらに延びることがあります。

相場より安く売っても許可は出ますか。

事情の説明が必要になります。建物の傷みや土地の条件で安くせざるを得ない場合は、写真や見積もりなどの根拠をそろえてください。理由なく安い価格は、ご本人の財産を減らす行為とみなされ許可が下りないことがあります。

売ったお金を、介護してきた家族の生活費に使えますか。

使えません。売却代金はご本人の財産で、施設費や医療費などご本人のために使うものです。後見人は毎年、家庭裁判所に収支を報告します。

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