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2026/06/18
不動産売却の契約不適合責任 対策と免責方法【2026年版】
不動産売却の契約不適合責任 対策と免責方法【2026年版】
不動産を売却した後に「雨漏りがある」「給排水管が凍結破損していた」と買主から請求が届く――これが契約不適合責任のリスクです。
2020年の民法改正により、売主が負う責任の範囲と内容は大きく変わりました。適切な対策を講じずに売却すると、売却後も長期にわたって損害賠償や修補費用を負担しなければならない事態になりかねません。
この記事では、告知書の書き方・免責特約の文例・インスペクション活用・請求が来た後の対処フローまでを一記事に集約し、売主が自分を守るための具体的な方法をわかりやすく解説します。
契約不適合責任とは何か(旧瑕疵担保責任との違い)
契約不適合責任とは、売却した不動産が契約の内容に適合していなかった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
2020年4月の民法改正により、旧来の「瑕疵担保責任」に代わる制度として整備されました。
民法改正で変わった3つのポイント
旧法の瑕疵担保責任と比べて、売主にとって不利な方向に変化した点があります。主な改正ポイントは以下の3つです。
- 責任の対象が拡大:「隠れた瑕疵」から「契約内容との不適合」全般に広がった
- 買主の救済手段が増加:従来の損害賠償・解除に加え、修補請求・代金減額請求が明文化された
- 請求期間の明確化:不適合を知った日から1年以内に通知すれば、その後も権利行使できる
旧法では「隠れた瑕疵」に限られていたため、買主が事前に確認できた欠陥は責任対象外でした。しかし改正後は、契約書・告知書に記載されていない不適合であれば、原則として売主の責任となります。
売主が負うリスクと請求される内容
買主が行使できる権利は以下の4種類です。いずれも売主にとって大きな経済的リスクとなります。
- 修補請求:欠陥箇所を売主の費用で修繕するよう求める
- 代金減額請求:不適合の程度に応じて売買代金の引き下げを求める
- 損害賠償請求:欠陥によって生じた損害(修繕費・引越し費用等)の賠償を求める
- 契約解除:契約の目的が達成できない重大な不適合の場合に契約を解除する
損害賠償の金額は物件の状態や欠陥の程度によって異なりますが、雨漏りの修繕であれば数十万〜100万円超になるケースもあります。
こうしたリスクを事前に回避するためには、以降で解説する対策を着実に実行することが重要です。
売却前にやるべき告知義務の範囲と告知書の書き方
契約不適合責任のリスクを最小化するための第一歩は、告知書(物件状況等報告書)の正確な記載です。
告知書は売主が知っている不具合を買主に伝えるための書類であり、記載することで「買主は承知の上で購入した」という合意が成立します。
告知が必要な不具合・事象の具体例
告知書への記載が必要な主な事項は以下の通りです。
- 雨漏り・シミ・水濡れの跡(過去の事象を含む)
- シロアリの被害・駆除歴
- 給排水管の水漏れ・詰まり・腐食
- 外壁・基礎のひび割れ・傾き
- 隣地との境界に関するトラブル
- 騒音・悪臭・振動などの周辺環境問題
- 事故・事件(心理的瑕疵)
- 増改築・リフォームの履歴と内容
「過去に修繕したから問題ない」と判断して記載を省略するのは危険です。
修繕済みであっても、修繕の経緯・箇所・時期を告知書に記載しておくことで、売主の誠実な開示姿勢を示すことができます。
告知書の記載方法と注意点
告知書は「はい・いいえ」のチェック方式が一般的ですが、「はい」に該当する場合は必ず補足欄に詳細を記載してください。
記載例(雨漏りの場合):
- 発生時期:2023年9月
- 発生箇所:2階北側洋室の天井
- 対応内容:屋根業者により板金補修済み(補修費用:約15万円)
- 現在の状態:補修後は雨漏りなし(保証書あり)
「どこまで書けばよいか」迷った場合は、「売主が知っている事実はすべて書く」が基本です。
記載漏れがあると、後日「知っていたのに告げなかった」として告知義務違反に問われるリスクがあります。
不動産売却にかかる費用・手続き全体については、不動産売却の方法と費用もあわせてご参照ください。
免責特約の活用方法と契約書への記載文例
告知書の記載と並行して有効なのが、免責特約(契約不適合責任の免除・制限に関する特約)の活用です。
特約を契約書に盛り込むことで、売主が負う責任の範囲を限定することができます。
免責特約が有効になる条件と限界
免責特約は原則として有効ですが、以下の場合は無効になる可能性があります。
- 売主が知っていた不適合を故意に告げなかった場合(民法572条)
- 売主が自ら不適合を作出した場合
- 買主が事業者でなく個人の場合に、消費者契約法上の不当条項と判断された場合
「現状渡し」という文言だけでは免責になりません。具体的にどの責任をどの範囲で免除するかを明記する必要があります。
特約文例:現状渡し・一部免責・期間制限
以下に代表的な特約文例を示します。実際の契約書に盛り込む際は、専門家への確認を推奨します。
【文例①:現状渡し(全部免責)】
- 「売主は本物件を現状のまま引き渡すものとし、本物件の種類・品質に関する契約不適合責任を一切負わないものとする。」
【文例②:一部免責(特定箇所を限定)】
- 「売主は、別添告知書に記載の雨漏り(2階北側天井部)については、修補・損害賠償・代金減額の責任を負わないものとする。」
【文例③:期間制限(責任期間を短縮)】
- 「買主は、引渡し完了日から3か月以内に発見した契約不適合についてのみ、売主に通知できるものとする。」
文例①は全部免責のため交渉力が必要ですが、②・③は特定の範囲や期間を限定するため、買主の合意を得やすい傾向にあります。
なお、告知書に記載していない既知の不具合を免責にしようとすると特約が無効になるリスクがあるため、必ず告知書と整合させた上で特約を設けることが重要です。
インスペクション(建物状況調査)で売主リスクを減らす方法
インスペクションとは、建物の専門家が劣化・不具合の状況を調査する「建物状況調査」のことです。
売却前にインスペクションを実施することで、不具合を事前に把握し、告知書への正確な記載と免責特約の設定に活用できます。
インスペクションの費用相場と調査範囲
インスペクションの費用は物件規模や調査内容によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
- 戸建て(目視調査):5万〜8万円程度
- 戸建て(詳細調査・機器使用):8万〜15万円程度
- マンション(専有部分):4万〜6万円程度
調査範囲は主に屋根・外壁・床下・天井・給排水設備・電気設備などの目視確認が中心です。
調査時間は戸建てで約2〜3時間、マンションで約1〜2時間が目安となっています。
調査結果の開示が契約不適合責任に与える効果
インスペクション報告書を買主に開示することには、以下のメリットがあります。
- 告知書との整合性確保:専門家の調査結果を根拠に告知内容を正確化できる
- 責任範囲の明確化:調査時点での状態が記録されるため、引渡し後の不適合との因果関係を立証しやすい
- 買主の安心感向上:透明性の高い売却として信頼性が上がり、価格交渉もスムーズになりやすい
- 調査未発見の不具合は責任軽減の根拠に:「専門家が調査しても発見できなかった」事実が売主の免責主張を補強する
インスペクションを実施した場合、その費用5〜10万円は売却後のトラブル対応費用と比べて非常に小さなコストです。
戸建て売却をご検討の場合は、戸建ての売却のページも参考にしてください。
札幌特有の瑕疵リスクと寒冷地ならではの告知ポイント
北海道・札幌での不動産売却では、全国共通の不具合に加えて、寒冷地特有のリスクについても丁寧な告知が必要です。
道内特有の気候条件に起因する建物の劣化は、買主が転入者であれば見落とすことも多く、売却後のトラブルになりやすい項目です。
給排水管の凍結破損・結露・断熱材劣化の告知
札幌では冬季の気温がマイナス10℃前後まで下がる日も珍しくなく、以下の不具合が発生しやすい環境にあります。
- 給排水管の凍結・破裂:不凍液の補充や配管の保温が不十分な場合、管内の水が凍結して破裂する。修繕費用は数万〜数十万円に達することがある
- 結露・カビ:断熱性の低い窓周りや外壁内部に結露が集中し、カビや腐食が生じやすい
- 断熱材の劣化・欠損:施工年代が古い建物では断熱材がずれている・脱落しているケースがある
これらは過去に発生したことがある場合、告知書に必ず記載する必要があります。
市街地エリアや地下鉄沿線の築古マンションでは断熱改修の経緯も開示しておくと安心です。
屋根雪害・融雪設備の状態確認と記録方法
JR沿線や市街地エリアの戸建てでは、積雪荷重による屋根への影響も確認が必要です。
- 屋根の変形・たわみ:積雪が多い年は屋根材の変形や棟のずれが発生することがある
- 融雪設備の稼働状況:屋根融雪・ロードヒーティングが設置されている場合、その動作状況と最終点検日を記録する
- 雨樋の凍結・破損:冬季の氷柱(つらら)形成により雨樋が変形・破損するケースがある
北海道ならではのこれらのリスクは、全国向けの告知書テンプレートに項目がないことが多いため、売主が自発的に補足欄に記載することが重要です。
空き家・空き地の売却では冬季の管理が手薄になりやすく、凍結被害が発生しやすい環境です。詳しくは空き家・空き地の売却をご覧ください。
物件種別ごとの契約不適合責任の注意点
契約不適合責任のリスクは、物件の種別によって注意すべきポイントが異なります。
自分の物件がどのケースに該当するかを確認し、対策の優先順位を立ててください。
マンション・戸建・土地それぞれのリスクの違い
- マンション:専有部分(室内)の設備不具合・水漏れ・配管老化が主なリスク。共用部分の不具合は管理組合に責任が帰属するが、区分所有者として知っている情報は開示が必要
- 戸建て:屋根・外壁・基礎・給排水管・シロアリなど建物全体が対象。札幌では凍結・雪害リスクが加わるため告知項目が多くなりやすい
- 土地:土壌汚染・埋設物・地盤沈下・境界問題が主なリスク。建物がない分、買主の調査範囲が広く、引渡し後に発見されるリスクが高い
相続物件・ワケあり物件の場合の対応
相続で取得した物件や、事情のある物件の売却では特有の注意点があります。
- 相続物件:被相続人が長年居住しており、建物の状態を売主が把握していないケースが多い。不明な点は「不明」と明記した上で、インスペクションで状態を確認することが有効
- 長期空き家:給排水管の経年劣化・害虫・カビが進行しやすく、状態確認が特に重要
- 事故・事件のあった物件:心理的瑕疵として告知義務が生じる。国土交通省のガイドラインに沿って適切に開示する
相続物件の売却に関する詳しい解説は相続物件の売却をご参照ください。
売却後に請求が来た場合の交渉・対処フロー
適切な対策を講じていても、売却後に買主から請求が届くケースはゼロではありません。
請求を受けた際に慌てず対処するため、初動から交渉完了までの流れを把握しておきましょう。
請求を受けたときの初動対応と窓口
買主から不適合の通知・請求が届いた場合の初動手順は以下の通りです。
- STEP1:内容の確認:請求の内容(修補・損害賠償・代金減額・解除)と不適合の箇所・程度を文書で確認する
- STEP2:告知書・契約書の照合:問題となった箇所が告知書に記載済みか、免責特約の適用範囲かを確認する
- STEP3:仲介会社への連絡:売却を仲介した不動産会社に状況を報告し、対応のサポートを求める
- STEP4:専門家への相談:請求額が大きい場合や交渉が難航する場合は、弁護士や建築士への相談を検討する
修補・損害賠償・代金減額の交渉ポイント
交渉では以下の観点から売主の立場を整理することが重要です。
- 告知書への記載有無:記載済みであれば買主の認識があったとして、責任軽減の根拠になり得る
- 免責特約の適用範囲:特約の文言が問題の箇所・内容をカバーしているか確認する
- インスペクション報告書:調査時点での状態が記録されていれば、引渡し後に生じた変化との因果関係を争う余地が生まれる
- 請求期間の確認:買主が不適合を知った日から1年以内に通知しているかを確認する(期間経過後の請求は原則として認められない)
交渉が長引く場合は、当社にご相談いただければ適切な専門家のご紹介も可能です。無料査定・お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
よくある質問
Q: 契約不適合責任の請求期間(知った日から1年)を過ぎたら、売主は完全に免責されますか?
A: 原則として、買主が不適合を知った日から1年以内に売主へ通知しなければ、請求権は消滅します。
ただし、売主が不適合を知っていながら故意に告げなかった場合は、この1年ルールの適用外となります。また、引渡しから10年の除斥期間内であれば別途の請求が可能な場合もあるため、完全な免責とは言い切れません。
Q: 「現状渡し」と記載すれば契約不適合責任を免除できますか?
A: 「現状渡し」の文言だけでは免除にはなりません。契約書上で明確に「契約不適合責任を負わない」旨の特約を設ける必要があります。
また、売主が知っていた欠陥を告げずに「現状渡し」とした場合、特約が無効と判断されることがあります。告知書との整合を取った上で、具体的な免責特約を契約書に盛り込むことが重要です。
Q: 売却後に雨漏りが発覚した場合、修繕費は売主が全額負担しなければなりませんか?
A: 事前に告知書へ記載していた箇所の雨漏り、または免責特約の対象に含まれる場合は、売主の負担を軽減・免除できる余地があります。
インスペクションを実施して調査報告書を開示していた場合も、責任範囲の限定に有効です。一方、知っていた雨漏りを故意に記載しなかった場合は、全額負担を求められる可能性が高くなります。
Q: インスペクションを事前に受けると、売却価格や契約不適合責任にどう影響しますか?
A: インスペクションを実施することで、物件の状態が客観的な報告書として記録されます。これにより買主との価格交渉が透明化され、根拠のない値引き要求を防ぎやすくなります。
契約不適合責任については、調査で発見された不具合を告知書に記載し、特約と組み合わせることで責任範囲を明確に限定できます。費用は5〜10万円程度ですが、売却後のトラブル回避効果を考えると費用対効果は高いと言えます。
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