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2026/07/02
戸建て売却の隣地越境トラブル解決法
戸建て売却の隣地越境トラブル解決法
戸建ての売却を進めようとしたとき、隣地との越境が発覚して手続きが止まってしまうケースは少なくありません。国土交通省の調査によると、境界トラブルを抱える不動産取引は全体の約15%にのぼるとされています。
越境の問題は放置すると売却価格の下落や契約解除につながるリスクがあります。しかし、正しい手順を踏めば解決できるケースがほとんどです。
この記事では、越境物の種類別の対処法から隣地所有者との交渉術、覚書の作成方法まで、実務レベルで使える情報を網羅的に解説します。札幌など寒冷地特有の越境リスクについてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
越境とは?戸建て売却前に知るべき基礎知識
越境の基本的な定義と、不動産取引でなぜ問題になるのかを整理します。
越境の定義と不動産取引で問題になる理由
越境とは、建物や構造物、植栽などが隣地との境界線を超えて相手の土地に入り込んでいる状態を指します。民法では土地の所有権は境界線によって区切られており、越境は所有権の侵害にあたります。
不動産取引において越境が問題となるのは、買主が将来的にトラブルを引き継ぐリスクがあるためです。金融機関も越境のある物件に対しては融資審査を厳しくする傾向があり、売却のハードルが上がります。
実際に、越境が原因で売買契約が白紙撤回されるケースは年間数百件規模で発生しており、事前の確認と対処が欠かせません。戸建て売却の基本はこちらもあわせてご確認ください。
越境物の種類別リスト(樹木・屋根・塀・配管・基礎)
越境物は大きく5つの種類に分類でき、それぞれリスクの度合いが異なります。
- 樹木・枝の越境:最も多い越境のパターンで、全越境事例の約40%を占めます。落ち葉や日照被害も付随するため苦情に発展しやすい傾向があります
- 屋根・雨樋の越境:建物の構造に関わるため撤去が難しく、解決に平均3〜6ヶ月かかることがあります。雨水の排水方向も問題になります
- 塀・フェンスの越境:境界線上に設置されているケースも多く、所有権の帰属自体が争点になることがあります
- 地中配管の越境:地表からは見えないため発見が遅れやすく、掘削調査に10万〜30万円程度の費用がかかります
- 基礎部分の越境:建物の土台が越境しているケースで、是正には建物の一部解体が必要になるなど最も対処が困難です
一般的に、地上部分の越境(樹木・屋根・塀)は比較的対処しやすい一方、地中や基礎の越境は発見・解決ともにコストがかかります。
自分が越境している場合と隣地から越境されている場合の対応フロー
越境問題では「自分が越境している側」か「越境されている側」かで対応手順が大きく変わります。立場別に整理して解説します。
売主側が越境しているケースの対処手順
ご自身の建物や樹木が隣地にはみ出している場合は、売主として主体的に解決を進める必要があります。
- 境界確認測量の実施:土地家屋調査士に依頼し、費用は一般的に30万〜50万円が目安です
- 越境部分の特定と記録:越境の範囲を図面と写真で記録します。測量図に越境範囲を明示してもらいましょう
- 是正可能かどうかの判断:枝の剪定や塀の撤去で解消できるかを検討します。是正費用は5万〜100万円と幅があります
- 隣地所有者への説明と協議:是正する旨を説明し、工事日程や方法について合意を得ます
- 是正が困難な場合は覚書を作成:建物基礎など撤去できない越境は、隣地所有者と覚書を交わして売却に進みます
売主側が越境している場合は、原則として売主の費用負担で是正するのが一般的です。是正に要する期間は内容により2週間〜6ヶ月程度と差があります。
隣地から越境されているケースの対処手順
隣地の建物や樹木がこちらの敷地に入り込んでいる場合も、売却前に対処が求められます。
- 現況の証拠を確保:写真撮影と測量で越境の状態を客観的に記録します
- 隣地所有者への通知:越境の事実を書面で伝え、是正の協力を依頼します
- 是正交渉または覚書の締結:相手方が是正に応じる場合はスケジュールを決め、応じない場合は覚書で将来的な是正を約束してもらいます
- 買主への説明準備:覚書の写しを用意し、契約時に重要事項として説明します
隣地からの越境の場合、2023年施行の改正民法により、一定の条件を満たせば隣地の枝を自ら切除できるようになりました。ただし事前に催告が必要で、相手方に到達してから相当期間(一般的に2週間程度)経過後に切除可能となります。
越境物の種類別・具体的な解決手順
ここでは越境物の種類ごとに、具体的な解決手順・費用感・依頼すべき専門業者を解説します。
樹木・枝の越境と屋根・雨樋の越境への対処
樹木・枝の越境は最も件数が多い反面、比較的解決しやすい越境です。
- 剪定で解決:造園業者に依頼した場合の費用は1本あたり5,000円〜3万円程度です
- 伐採が必要な場合:大木の伐採は5万〜20万円程度で、根の撤去も含めると10万〜30万円になることがあります
- 工期:剪定は1日、伐採は2〜3日が目安です
改正民法の規定により、隣地の枝は催告後に一定期間経過すれば切除できますが、根については従来どおり自ら切り取ることが認められています。
屋根・雨樋の越境は構造物の改修が伴うため、より慎重な対応が求められます。
- 雨樋の付け替え:板金業者に依頼し、費用は10万〜25万円程度です
- 屋根の軒先カット:大規模な工事になる場合は50万〜150万円かかることもあります
- 是正が困難な場合:覚書を作成し、将来の建て替え時に是正する旨を明記します
屋根の越境は数センチ単位のことが多く、是正よりも覚書による解決が現実的なケースが約70%を占めます。
塀・基礎のずれと地中配管の越境への対処
塀・フェンスの越境は境界線上に建てられたものの所有権が不明確な場合に特に問題となります。
- 塀の撤去・再設置:費用はブロック塀で1mあたり1万〜2万円、全体では15万〜40万円が相場です
- 共有塀の場合:隣地所有者と費用を折半するケースもありますが、事前の合意が欠かせません
- 工期:撤去から再設置まで1〜2週間程度です
地中配管の越境は目視で発見できないため、対処にも時間がかかります。
- 調査費用:掘削調査で10万〜30万円、カメラ調査で5万〜15万円程度です
- 配管のルート変更:工事費用は30万〜80万円程度で、自治体の許可が必要な場合もあります
- 依頼先:設備工事業者や水道指定工事店に相談します
基礎部分の越境は建物の構造に直結するため、是正が最も難しい越境です。建て替え時の是正を約束する覚書での対応が一般的で、覚書があれば売却を進められるケースが多くあります。
隣地所有者との交渉術と合意形成のステップ
越境問題の解決には隣地所有者との交渉が避けて通れません。円満に合意を得るための具体的な進め方を解説します。
話の切り出し方と交渉時の注意点
交渉の成否は最初の切り出し方で決まるといっても過言ではありません。以下のポイントを押さえましょう。
- まずは挨拶から:いきなり越境の話を持ち出さず、日頃のお礼や近況報告から会話を始めます
- 「お願い」の姿勢:「越境を指摘する」のではなく「売却にあたりご相談したい」という形で切り出します
- 測量結果を見せながら説明:感情論ではなく客観的なデータに基づいて話を進めます
- 相手のメリットも伝える:覚書を交わすことで隣地側も将来の境界トラブルを防げることを説明します
- 不動産会社の同席を検討:第三者が入ることで冷静な協議がしやすくなります
交渉の場では録音やメモを取り、合意内容を後日書面化することが大切です。口頭の約束だけでは後からトラブルが再燃するリスクがあります。
合意に至らない場合の対処法
隣地所有者が交渉に応じない、または合意できない場合にも対処法はあります。
- 自治体の境界問題相談窓口:無料で利用でき、中立的な助言を得られます
- ADR(裁判外紛争解決手続き):弁護士会や土地家屋調査士会が運営し、費用は5万〜15万円程度です
- 筆界特定制度の利用:法務局に申請し、境界を公的に特定してもらう制度で、費用は数万円程度です
- 民事調停・訴訟:最終手段として裁判所の調停を利用します。弁護士費用は30万〜60万円程度かかります
多くの場合、ADRや筆界特定制度の段階で解決に至ります。訴訟まで発展するケースは全体の約5%以下とされており、まずは話し合いでの解決を目指すことが重要です。
越境の覚書(合意書)の作成方法と記載すべき項目
越境を是正せずに売却を進める場合、覚書の作成が事実上の必須条件となります。記載すべき項目と作成のポイントを解説します。
覚書に盛り込む必須項目と注意点
覚書には以下の項目を漏れなく記載する必要があります。
- 越境の事実の確認:どの構造物がどの範囲で越境しているかを図面とともに明記します
- 越境物の所有者の明示:越境物がどちらの所有であるかを明確にします
- 現状維持の合意:現時点では越境状態を容認する旨を記載します
- 将来の是正時期:「建て替え時」「増改築時」など是正のタイミングを具体的に定めます
- 承継条項:土地を売却した場合、次の所有者にも覚書の内容を引き継ぐ旨を明記します
- 両者の署名・捺印と作成日:実印での捺印が望ましく、印鑑証明書を添付するとより確実です
承継条項は特に重要です。これがないと売却後に新しい所有者が覚書の効力を争う可能性があります。
覚書作成の費用負担と専門家への依頼
覚書の作成は当事者間で行うことも可能ですが、専門家に依頼するのが安全です。
- 不動産会社が作成:仲介手数料の範囲内で対応してくれることが多く、追加費用がかからないケースもあります
- 司法書士に依頼:費用は3万〜8万円程度で、法的に不備のない書面が作成できます
- 弁護士に依頼:費用は5万〜15万円程度で、複雑な越境案件や紛争リスクが高い場合に適しています
費用負担は、越境している側が負担するのが一般的です。ただし双方の合意のもと折半とするケースもあります。売却にかかる費用の詳細もご参照ください。
札幌特有の越境トラブルと冬季の現地確認の重要性
北海道、特に札幌では本州とは異なる越境トラブルが発生します。寒冷地ならではのリスクを理解しておきましょう。
積雪による屋根雪落下と凍結による塀・基礎のずれ
札幌の年間降雪量は約600cmにのぼり、積雪に関連した越境問題が多発します。
- 屋根雪の隣地落下:屋根の雪が隣地に落ちる「落雪越境」は札幌で最も多い越境トラブルの一つです。落雪によりフェンスや車が損傷するケースも報告されています
- 雪庇(せっぴ)の張り出し:屋根の軒先にできる雪庇が隣地上空にせり出し、落下時に被害を及ぼす危険があります
- 凍結による塀のずれ:地中の水分が凍結・膨張する「凍上」により、塀やブロックが数センチずれることがあります。道内では凍結深度が60〜100cmに達するため、基礎の深さが不足している塀で発生しやすい現象です
- 基礎の凍害:コンクリート基礎が凍害でひび割れ・膨張し、隣地側に傾くケースもあります
これらは経年で徐々に進行するため、長年住んでいるお客様ご自身も気づいていないことが少なくありません。
冬季に見落としやすい越境の確認ポイント
札幌で戸建てを売却する際は、積雪のない時期(5月〜10月)に現地確認を行うことが重要です。
- 境界杭の確認:積雪期は境界杭が雪に埋もれて確認できません。春先の雪解け後、杭がずれていないかチェックします
- 樹木の枝張り:落葉樹は冬季に枝が見えにくく、夏に葉が茂ると越境範囲が大きく変わります
- 雨樋と排水:雪解け水の排水方向は冬季には確認しづらく、春先の融雪期に実際の水の流れを確認します
- 地中配管の凍結膨張:冬季の凍結で配管がずれ、春に越境が判明するケースがあります
市街地エリアでは隣地との距離が近い住宅が多いため、地下鉄沿線やJR沿線の住宅密集地では特に注意が必要です。当社でも査定時に越境の有無を重点的に確認しております。ワケあり物件の売却についてはこちらもご覧ください。
越境がある戸建てを売却する際の注意点
越境問題を抱えた戸建てでも売却は可能ですが、法的リスクと価格への影響を理解しておく必要があります。
契約不適合責任のリスクと告知義務
2020年の民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。越境の事実を知りながら告知しなかった場合、売主は損害賠償や契約解除のリスクを負います。
告知義務の対象となるのは、売主が知っている越境の事実すべてです。「気づかなかった」という言い訳は、専門家による調査を怠った場合には通用しにくい傾向にあります。
トラブルを未然に防ぐため、売却前に境界確認測量を実施し、越境の有無を明確にしておくことが大切です。
買主への説明と売却価格への影響
越境がある物件は、買主にとってリスク要因となるため価格交渉の材料になりやすい点に注意が必要です。
- 覚書ありの場合:適正な覚書が交わされていれば、価格への影響は比較的小さく、相場の5〜10%程度の減額で収まるケースが多くあります
- 覚書なしの場合:買主のリスクが高まるため、15〜20%の減額交渉を受ける可能性があります
- 是正済みの場合:越境を完全に解消していれば、通常の相場での売却が期待できます
重要事項説明書には越境の事実と対処状況を正確に記載し、覚書の写しを添付して買主に説明することが重要です。透明性のある説明がスムーズな売却につながります。相続物件の売却など複雑な案件でも、越境の事前整理が成約率を高めます。
よくある質問
Q: 隣の家の木の枝が自分の敷地にはみ出している場合、売却前に勝手に切ってもよいですか?
A: 2023年4月施行の改正民法により、隣地の枝についても一定の条件を満たせば自ら切除できるようになりました。具体的には、枝の切除を催告したにもかかわらず相当期間(一般的に2週間程度)内に切除されない場合などが該当します。
ただし、事前の催告なしにいきなり切ることは認められていません。まずは隣地所有者に書面で通知し、記録を残したうえで対応することをお勧めします。
Q: 越境の覚書は誰が作成し、費用はどちらが負担するのが一般的ですか?
A: 覚書の作成は、仲介を担当する不動産会社が対応するケースが最も多く、次いで司法書士への依頼が一般的です。司法書士に依頼した場合の費用は3万〜8万円程度が目安となります。
費用負担は、越境している側が負担するのが通例です。ただし、双方の話し合いにより折半とするケースもあり、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
Q: 越境がある戸建てでも住宅ローンの審査は通りますか?
A: 越境の覚書(合意書)が適切に作成されていれば、多くの金融機関で住宅ローンの審査は通る傾向にあります。覚書には越境の事実確認、現状維持の合意、将来の是正時期、承継条項が含まれていることが重要です。
ただし、越境の規模が大きい場合や覚書がない場合は、融資を断られることもあります。事前に不動産会社を通じて金融機関に相談しておくと安心です。
Q: 越境トラブルを放置したまま売却すると契約不適合責任を問われますか?
A: 越境の事実を知りながら買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任に基づく損害賠償請求や契約解除を求められるリスクがあります。告知義務違反として売主の責任が問われる可能性が高くなります。
トラブルを防ぐためには、売却前に境界確認測量を行い、越境が判明した場合は是正または覚書の作成を済ませたうえで、重要事項説明書に正確に記載することが大切です。
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