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2026/07/14
不動産売却の譲渡損失と繰越控除の活用法
不動産売却の譲渡損失と繰越控除の活用法
不動産を売却した際、購入時よりも価格が下がっていれば「譲渡損失」が発生します。この損失は確定申告を行うことで、給与所得などと損益通算し、さらに最長4年間にわたる繰越控除を受けられる可能性があります。
本記事では、譲渡損失の計算方法から繰越控除の適用条件、年収別の節税シミュレーション、さらに札幌エリア特有の市場事情まで、制度を最大限活用するための情報を網羅的に解説します。
不動産売却で譲渡損失が発生する仕組み
譲渡損失とは、不動産の売却価額が取得費と譲渡費用の合計を下回った場合に生じるマイナスの差額です。まずは基本的な計算の仕組みと、損失が出やすいパターンを整理します。
譲渡損失の計算方法と取得費・譲渡費用の整理
譲渡損失は以下の計算式で求めます。
譲渡損失 = 売却価額 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費に含まれる主な項目は次のとおりです。
- 購入代金(建物部分は減価償却後の金額)
- 購入時の仲介手数料
- 登録免許税・不動産取得税
- 測量費やリフォーム費用
譲渡費用には、売却時の仲介手数料・印紙税・解体費用などが該当します。なお、購入時の契約書が見つからない場合は売却価額の5%を概算取得費として計算しますが、この方法では損失額が大幅に小さくなるため注意が必要です。
譲渡損失が出やすい不動産の特徴
すべての売却で損失が出るわけではありません。一般的に損失が発生しやすいパターンには、以下のような傾向があります。
- 築20年以上の木造戸建て:建物の資産価値がほぼゼロに近づき、土地値のみでの売却となりやすい
- 郊外・駅徒歩15分超の立地:需要が限定されるため、購入時より大きく価格が下がるケースが多い
- 市場下落局面での売却:景気後退期や人口減少エリアでは相場全体が下落し、損失が拡大する
- バブル期〜2000年前後に購入した物件:購入価格が割高で、現在の相場との差が大きくなりやすい
特に築30年を超えるマンションでは、購入価格の40〜60%程度まで価格が落ちている事例も珍しくありません。
譲渡損失の繰越控除とは?制度の全体像と適用条件
譲渡損失が発生した場合、一定の条件を満たせば給与所得などから差し引く「損益通算」と、翌年以降に繰り越す「繰越控除」が認められています。制度の全体像を見ていきます。
損益通算と最長4年間の繰越控除の流れ
まず売却した年の確定申告で、譲渡損失を給与所得や事業所得と損益通算します。それでも控除しきれない損失額がある場合、翌年から最長3年間にわたって繰り越して控除できます。
つまり、売却年を含めて合計4年間にわたり、所得税と住民税の負担を軽減できる仕組みです。たとえば1,200万円の譲渡損失があり、年間の課税所得が300万円の方であれば、4年間かけて損失を使い切る計算になります。
買換え特例と居住用財産の譲渡損失特例の違い
譲渡損失の繰越控除には2つの制度があり、状況に応じて適用できる特例が異なります。
| 項目 | 買換え特例(措法41条の5) | 残債特例(措法41条の5の2) |
|---|---|---|
| 住み替え | 必要(新居の購入が条件) | 不要(売却のみでもOK) |
| 住宅ローン残債 | 問わない | 売却価額を上回る残債が必要 |
| 損失の上限 | 譲渡損失の全額 | ローン残債から売却価額を引いた額 |
| 住宅ローン控除との併用 | 不可 | 可能 |
| 所有期間 | 売却年の1月1日時点で5年超 | 売却年の1月1日時点で5年超 |
住み替えを伴わない売却でも、住宅ローンの残債が売却価額を上回っていれば残債特例が使える点は、多くの方が見落としがちなポイントです。
売却時にかかる費用全般については、売却の方法と費用の詳細もあわせてご確認ください。
【年収別】繰越控除4年間の節税シミュレーション
繰越控除を活用すると実際にどれほどの節税になるのか、年収帯と損失額の組み合わせで試算します。金額はあくまで概算であり、扶養控除や社会保険料控除の状況により変動します。
年収400万円・譲渡損失800万円のケース
給与所得控除後の課税所得を約200万円と仮定した場合の試算です。
| 年度 | 繰越損失残高 | 通算される所得 | 節税額(所得税+住民税) |
|---|---|---|---|
| 売却年(1年目) | 800万円 | 200万円 | 約30万円 |
| 2年目 | 600万円 | 200万円 | 約30万円 |
| 3年目 | 400万円 | 200万円 | 約30万円 |
| 4年目 | 200万円 | 200万円 | 約30万円 |
| 4年間合計 | 約120万円 | ||
年収400万円の方でも、4年間の繰越控除により約120万円の税負担を軽減できる計算です。
年収600万円・譲渡損失1,200万円のケース
給与所得控除後の課税所得を約350万円と仮定した場合の試算です。
| 年度 | 繰越損失残高 | 通算される所得 | 節税額(所得税+住民税) |
|---|---|---|---|
| 売却年(1年目) | 1,200万円 | 350万円 | 約53万円 |
| 2年目 | 850万円 | 350万円 | 約53万円 |
| 3年目 | 500万円 | 350万円 | 約53万円 |
| 4年目 | 150万円 | 150万円 | 約23万円 |
| 4年間合計 | 約182万円 | ||
年収600万円帯になると、4年間で約182万円の節税効果が見込めます。損失額が大きいほど繰越のメリットは大きくなるため、確定申告を行わずに放置してしまうのは非常にもったいない選択です。
札幌で譲渡損失が発生しやすいケースと市場背景
札幌圏の不動産市場には、道内ならではの事情があります。譲渡損失が発生しやすい背景を理解しておくことが重要です。
中古マンション価格の下落傾向が見られるエリアの特徴
札幌市内でも、地下鉄沿線の駅徒歩圏は比較的価格が安定している一方、JR沿線の駅から離れたエリアや、バス便のみのエリアでは中古マンションの価格が購入時から30〜50%下落しているケースが見受けられます。
2010年前後に建築された郊外の大規模マンションでは、分譲時3,000万円台の住戸が現在1,800万〜2,200万円で取引されている事例もあり、1,000万円前後の譲渡損失が生じる可能性があります。
札幌でのマンション売却については、札幌のマンション売却についてはこちらもご覧ください。
冬季売却が価格に与える影響
北海道では11月〜3月の冬季は内覧件数が大幅に減少する傾向にあります。積雪により外観や周辺環境が確認しづらくなることに加え、引越し需要そのものが低下するためです。
一般的に、道内では冬季に売り出した物件は春季と比べて成約価格が5〜10%低くなる傾向が見られます。売却時期の選択によっても譲渡損失の大きさが変わるため、可能であれば4月〜9月の売却活動開始が有利とされています。
確定申告の手続きと必要書類をステップ解説
繰越控除を受けるためには、譲渡損失が発生した年の翌年に確定申告を行い、その後も繰越期間中は毎年申告を続ける必要があります。
申告に必要な書類一覧と入手先
確定申告で一般的に求められる書類は以下のとおりです。
- 確定申告書(第一表・第二表・第三表):税務署またはe-Taxで入手
- 譲渡所得の内訳書:税務署またはe-Taxで入手
- 売買契約書の写し:売却時・購入時の両方
- 登記事項証明書:法務局で取得(オンライン申請も可)
- 源泉徴収票:勤務先から取得
- 住宅ローンの残高証明書:残債特例を使う場合に金融機関から取得
- 住民票の写し:市区町村役場で取得
書類の準備には時間がかかるため、売却が完了した時点で早めに取り揃えておくことをおすすめします。
e-Taxでの申告手順
e-Taxを使えば、自宅からオンラインで確定申告が完結します。大まかな流れは以下のとおりです。
- ステップ1:国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセスし、マイナンバーカードでログイン
- ステップ2:「分離課税の申告書」を選択し、譲渡所得の内訳書に売却情報を入力
- ステップ3:損益通算の計算画面で給与所得との通算を行う
- ステップ4:繰越控除の適用を選択し、翌年以降に繰り越す損失額を確認
- ステップ5:必要書類のPDFを添付し、電子送信で申告完了
繰越控除の適用を受ける年は、たとえ所得がゼロになる年であっても毎年の申告が必要です。1年でも申告を忘れると、繰越控除の権利が失われてしまいますのでご注意ください。
繰越控除が使えないケースと注意点
譲渡損失の繰越控除は強力な制度ですが、すべての売却に適用できるわけではありません。適用除外となる条件を事前に確認しておきましょう。
適用除外となる条件
以下に該当する場合、繰越控除は一般的に適用できません。
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合
- 売却先が親族や同族会社など特殊関係者の場合
- 売却した不動産が居住用財産に該当しない場合(投資用物件・別荘など)
- 合計所得金額が3,000万円を超える年は、その年の繰越控除が適用不可
- 確定申告を行わなかった年がある場合、その時点で繰越が途切れる
特に所有期間の要件は「実際の居住期間」ではなく「所有期間」で判定される点にご注意ください。
住宅ローン控除との併用ルール
住み替えで新居を購入した場合、住宅ローン控除との併用が気になる方は多いです。
結論として、買換え特例(措法41条の5)では住宅ローン控除との併用は認められていません。一方、残債特例(措法41条の5の2)であれば住宅ローン控除との併用が可能です。
新居の購入を伴う場合は、繰越控除と住宅ローン控除のどちらが有利かを比較検討したうえで申告方法を選ぶことが大切です。戸建ての売却を検討中の方は、戸建て売却の流れを確認するもご参照ください。
売却損を最小限に抑えるためにできること
譲渡損失が出た場合の税制優遇も重要ですが、そもそも損失を最小限に抑える工夫も欠かせません。
売却タイミングの見極め方
不動産の売却価格は、市場動向と売り出し時期に大きく左右されます。損失を抑えるために意識したいポイントは以下のとおりです。
- 春の転勤シーズン(3〜4月)を見据えて、1〜2月に売り出しを開始する
- 札幌では雪解け後の4月〜5月に内覧が増加し、成約率が高まる傾向がある
- 周辺の開発計画や再開発情報を事前に確認し、地価上昇のタイミングを見極める
- 複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握したうえで売り出し価格を設定する
市街地エリアでは再開発の進展により価格が回復している地域もあります。売却を急がない場合は、市場の動きを見ながら判断することも選択肢のひとつです。
無料査定で現在の資産価値を把握する
売却を検討し始めた段階で、まず現在の市場価格を把握しておくことをおすすめします。査定額と住宅ローン残高を比較することで、譲渡損失がどの程度になるかを事前にシミュレーションできます。
当社では札幌エリアの不動産について無料査定を承っております。売却損が出そうな場合の繰越控除の活用方法も含めて、お気軽にご相談ください。無料査定のお問い合わせはこちらからお申し込みいただけます。
よくある質問
Q: 不動産の譲渡損失はどのように計算すればよいですか?
A: 譲渡損失は「売却価額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。取得費には購入代金(建物は減価償却後)、購入時の仲介手数料、登記費用などが含まれます。
購入時の契約書がない場合は売却価額の5%を概算取得費として計算しますが、損失額が小さくなるため、契約書は大切に保管しておくことが重要です。
Q: 譲渡損失の繰越控除を受けるために確定申告で必要な書類は何ですか?
A: 主な必要書類は、確定申告書(第一表・第二表・第三表)、譲渡所得の内訳書、売却時と購入時の売買契約書の写し、登記事項証明書、源泉徴収票です。
残債特例を利用する場合は、住宅ローンの残高証明書も必要になります。書類の取り寄せには時間がかかるため、売却完了後に早めに準備を始めることをおすすめします。
Q: 住み替えをしない場合でも譲渡損失の繰越控除は適用できますか?
A: 住み替えをしない場合でも、売却した不動産に住宅ローンの残債があり、その残債が売却価額を上回っている場合は「特定居住用財産の譲渡損失の特例(残債特例)」を利用できます。
ただし、控除できる損失額はローン残債から売却価額を差し引いた金額が上限となります。所有期間が5年超であることなどの要件も満たす必要があります。
Q: 譲渡損失の繰越控除と住宅ローン控除は併用できますか?
A: 買換え特例(措法41条の5)を利用する場合、住宅ローン控除との併用は認められていません。一方、残債特例(措法41条の5の2)であれば住宅ローン控除と併用が可能です。
新居を購入して住宅ローンを組む場合は、繰越控除と住宅ローン控除のどちらが有利になるかを総額で比較検討し、より節税効果の大きい方を選択することが大切です。
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