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2026/08/02
相続不動産の売却にかかる税金と特例
相続不動産の売却にかかる税金と特例
親から相続した不動産を売却する際、「税金がいくらかかるのか」「使える特例はあるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
特に札幌では、遠方に住むお子様世代が道内の実家を相続し、管理に困って売却を検討されるケースが増えています。
この記事では、相続した不動産を売却するときにかかる税金の全体像と、節税に活用できる3つの特例を横断比較しながら、損をしない売却判断のポイントを解説します。
相続不動産の売却でかかる税金の全体像
相続した不動産を売却すると、大きく分けて2種類の税金が発生する可能性があります。まずは全体像を把握しておきましょう。
譲渡所得税・住民税の計算の仕組み
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して譲渡所得税と住民税が課されます。計算式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
相続で取得した不動産の場合、取得費は被相続人(亡くなった方)が購入した当時の価格を引き継ぎます。購入時の契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することになり、税負担が大きくなりがちです。
税率は所有期間によって異なります。相続の場合、被相続人の所有期間を引き継げるため、多くのケースで長期譲渡所得(所有期間5年超)に該当します。
- 長期譲渡所得(5年超):所得税15.315% + 住民税5%(合計約20.315%)
- 短期譲渡所得(5年以下):所得税30.63% + 住民税9%(合計約39.63%)
たとえば札幌市内の戸建てを2,500万円で売却し、取得費が500万円、譲渡費用が100万円だった場合、譲渡所得は1,900万円となります。長期譲渡所得であれば、税額は約386万円です。
相続税との二重課税が起きるケース
相続した不動産には、すでに相続税が課されている場合があります。その不動産を売却すると、さらに譲渡所得税も発生するため、実質的な二重課税の状態になります。
この二重課税を軽減するために設けられているのが「取得費加算の特例」です。詳しくは次のセクションで解説します。
売却にかかる費用の詳細は売却の方法と費用のページもあわせてご確認ください。
節税に使える3つの特例を横断比較
相続不動産の売却では、条件を満たせば大幅に税負担を軽減できる特例が3つあります。それぞれの適用条件・期限・併用関係を一覧表で整理します。
取得費加算の特例・空き家特例・小規模宅地等の特例
| 項目 | 取得費加算の特例 | 空き家特例(3,000万円控除) | 小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|---|
| 概要 | 相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を圧縮 | 被相続人が居住していた家屋の売却益から最大3,000万円を控除 | 相続税の評価額を最大80%減額 |
| 適用期限 | 相続開始から3年10か月以内の売却 | 相続開始から3年後の年末まで | 相続税申告時に適用(申告期限:10か月以内) |
| 主な条件 | 相続税を納付していること | 昭和56年5月31日以前の旧耐震建物、または更地にして売却 | 居住用:330㎡まで、事業用:400㎡まで |
| 節税効果の目安 | 相続税額に応じて数十万〜数百万円 | 最大約609万円(3,000万円 × 20.315%) | 相続税を大幅軽減(評価額80%減) |
併用可否と適用期限の整理
特例の併用には制限があります。特に注意すべきポイントを整理します。
- 取得費加算の特例と空き家特例:併用不可。どちらか一方を選択する必要がある
- 小規模宅地等の特例と取得費加算の特例:併用可能。相続税申告で小規模宅地等を適用し、売却時に取得費加算も使える
- 小規模宅地等の特例と空き家特例:併用可能。ただし小規模宅地等を使うと相続税額が減り、取得費加算のメリットが下がる点に注意
一般的に、相続税の納税額が大きい場合は取得費加算の特例のほうが有利になりやすく、相続税がゼロまたは少額の場合は空き家特例の3,000万円控除のほうが節税効果は大きくなる傾向です。
どちらが有利かはケースごとに異なりますので、売却前に税理士への相談をおすすめします。
相続登記の義務化が売却タイミングに与える影響
2024年4月から相続登記が義務化されました。この制度変更は、相続不動産の売却判断に大きく関わります。
登記期限・罰則と売却判断の関係
相続登記の義務化により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
2024年4月より前に相続が発生した不動産も対象となっており、2027年3月末までに登記を完了させる必要があります。
売却するには登記名義の変更が前提となるため、いずれにしても相続登記は避けて通れません。売却を検討しているのであれば、早めに登記を済ませておくことで、買い手が見つかった際にスムーズに取引を進められます。
登記費用の目安と手続きの流れ
相続登記にかかる費用の目安は以下のとおりです。
- 登録免許税:固定資産税評価額の0.4%(例:評価額1,000万円なら4万円)
- 司法書士報酬:一般的に5万〜10万円程度
- 戸籍謄本等の取得費用:数千円〜1万円程度
合計すると、10万〜20万円前後が相場です。相続人が多い場合や不動産が複数ある場合は、戸籍収集に時間がかかるため、早めの着手が重要です。
複数相続人がいる場合の売却の進め方
相続人が複数いる場合、不動産の売却には全員の合意が必要です。分割方法によって手続きが大きく異なりますので、事前に方針を決めておくことが大切です。
代償分割と換価分割の違い
- 代償分割:相続人の1人が不動産を単独で取得し、他の相続人に代償金(現金)を支払う方法。不動産を残したい場合や、1人が売却を主導したい場合に適している
- 換価分割:不動産を売却して得た現金を相続人全員で分配する方法。全員が公平に現金を受け取れるため、合意が得やすい
札幌の相続案件では、道外に住むお子様世代が相続人となるケースが多く、現地管理が難しいことから換価分割を選ばれる割合が高い傾向にあります。
合意形成から売却完了までの手順
複数相続人で不動産を売却する場合の一般的な流れは以下のとおりです。
- 遺産分割協議:相続人全員で分割方法を話し合い、遺産分割協議書を作成する
- 相続登記:協議書の内容に基づき、法務局で登記名義を変更する
- 不動産会社への査定依頼:売却価格の目安を把握する
- 媒介契約・売却活動:買い手を募集し、条件交渉を行う
- 売買契約・決済・引渡し:売却代金を受領し、相続人間で分配する
相続人間で意見が合わない場合は家庭裁判所の調停を利用する方法もありますが、時間と費用がかかるため、できるだけ早い段階での話し合いが重要です。相続物件の売却に関する詳細は相続物件の売却ページもご参照ください。
札幌の相続物件を放置するリスクと早期売却の判断基準
北海道、特に札幌の相続物件には、本州とは異なるリスクがあります。放置期間が長引くほど資産価値が下がるため、早めの判断が欠かせません。
積雪寒冷地特有の劣化リスクと除雪義務
札幌は年間降雪量が約600cmに達する積雪寒冷地です。空き家を放置した場合、以下のようなリスクが発生します。
- 凍結による配管破裂:冬季に水抜きを怠ると給排水管が凍結・破裂し、修繕費が数十万円に及ぶことがある
- 屋根・外壁の劣化:積雪荷重と凍結融解の繰り返しにより、本州より劣化スピードが速い
- 除雪義務と近隣トラブル:札幌市では空き家であっても敷地の除雪は所有者の責任。放置すると近隣からの苦情や行政指導の対象となる場合がある
- 固定資産税の増額:特定空家に指定されると住宅用地の軽減措置が解除され、固定資産税が最大約6倍に跳ね上がる可能性がある
遠方に住んでいる場合、毎年の除雪費用だけでも年間10万〜30万円の負担になるケースもあります。維持コストと売却益を比較し、合理的な判断を行うことが大切です。
エリアによる流動性の違いと売却戦略
札幌市内でも、エリアによって不動産の売りやすさには差があります。
地下鉄沿線の物件は利便性が高く、買い手が見つかりやすい傾向にあります。特に市街地エリアのマンションは需要が安定しており、相場から大きく下がらずに売却できるケースが多くみられます。
一方、JR沿線の郊外エリアや、駅から離れた戸建ては売却に時間がかかることがあります。こうした物件は、買取による早期売却も選択肢のひとつです。
空き家・空き地の売却について詳しくはこちらのページをご覧ください。
相続から売却・確定申告までのスケジュール
相続不動産の売却には複数の期限が絡みます。特例の適用漏れを防ぐために、全体のスケジュールを時系列で把握しておきましょう。
相続発生から売却完了までの時系列
- 相続発生〜3か月以内:相続放棄をするかどうかの判断期限
- 相続発生〜4か月以内:被相続人の準確定申告の期限
- 相続発生〜10か月以内:相続税の申告・納付期限(小規模宅地等の特例はこの時点で適用)
- 相続発生〜3年以内:相続登記の義務化による登記期限
- 相続発生〜3年10か月以内:取得費加算の特例を使える売却期限
- 相続発生〜3年後の年末まで:空き家特例(3,000万円控除)を使える売却期限
上記のとおり、相続から3年以内が節税のゴールデンタイムといえます。この期間を過ぎると、取得費加算の特例も空き家特例も使えなくなり、税負担が大幅に増加します。
確定申告が必要になるケースと準備書類
相続した不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告が必要です。譲渡損失が出た場合は申告義務はありませんが、特例を適用する場合は利益・損失に関わらず申告が求められます。
確定申告に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 売買契約書(売却時・取得時の両方)
- 仲介手数料等の領収書
- 相続税の申告書の写し(取得費加算の特例を使う場合)
- 被相続人居住用家屋等確認書(空き家特例を使う場合)
- 登記事項証明書
書類の準備には時間がかかるため、売却が完了したら早めに取りかかることをおすすめします。
よくある質問
Q: 相続した不動産を売却したとき、相続税と譲渡所得税の両方を払う必要がありますか?
A: 原則として、相続税と譲渡所得税はそれぞれ別の税金であるため、両方が課される場合があります。相続税は財産を取得した時点で、譲渡所得税は売却して利益が出た時点で発生します。
ただし、この二重課税を軽減するために「取得費加算の特例」が設けられています。相続税の一部を取得費に上乗せすることで、譲渡所得を圧縮し、税負担を数十万〜数百万円軽減できる可能性があります。
Q: 相続から3年以内に売却すると税金が安くなる特例は、具体的にどのくらい節税できますか?
A: 取得費加算の特例では、納付した相続税のうち売却した不動産に対応する部分を取得費に加算できます。たとえば、相続税を1,000万円納付し、相続財産全体に占める不動産の割合が40%の場合、約400万円を取得費に上乗せできます。
長期譲渡所得の税率約20%で計算すると、約80万円の節税につながります。相続税額や不動産の割合によって効果は大きく変わりますので、事前にシミュレーションされることをおすすめします。
Q: 親が住んでいた札幌の実家を相続しましたが、空き家特例の3,000万円控除を受けるにはどんな条件がありますか?
A: 空き家特例の主な適用要件は以下のとおりです。被相続人が1人で住んでいた家屋であること、昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること、相続から売却まで空き家のままであることが求められます。
さらに、売却価格が1億円以下であること、耐震リフォームを行うか更地にして売却すること、相続開始から3年後の年末までに売却することが条件です。札幌では旧耐震の戸建てが多いため、適用できるケースは少なくありません。
Q: 相続不動産の売却で確定申告が必要になるのはどのようなケースですか?
A: 売却によって譲渡所得(利益)が発生した場合は、確定申告が必要です。また、利益が出ていなくても取得費加算の特例や空き家特例などの税制特例を適用する場合は申告が必須となります。
申告を怠ると特例が適用されず、本来より多くの税金を支払うことになりかねません。売却した翌年の2月16日〜3月15日が申告期間ですので、早めに税理士へ相談されることをおすすめします。
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