「相続した土地を手放したいけれど、買い手が見つからない」——そんなお悩みを抱えるお客様が増えています。2023年4月にスタートした相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に引き取ってもらえる画期的な仕組みです。
しかし実際には、申請しても承認されないケースが半数近くに上るのが現実です。この記事では制度の条件を正確に解説するだけでなく、「使えなかった場合にどうするか」という出口戦略まで、北海道・札幌圏ならではの事情を踏まえて詳しくご案内します。
相続土地国庫帰属制度の基本的な仕組みと、なぜこの制度が必要とされたのかを整理します。
日本全国で所有者不明の土地が増え続け、その面積は約410万ヘクタール(九州全体に匹敵)に達しています。相続を重ねるうちに登記が放置され、公共事業や災害復旧の妨げになるケースが深刻化しました。
こうした問題を解決するため、2023年4月27日に相続土地国庫帰属制度が施行されました。相続や遺贈で取得した土地を、一定の条件を満たせば国庫に帰属させられるという新しい制度です。
制度開始から2026年3月までの約3年間で、全国の申請件数は累計約2,800件を超えました。一方で承認率はおよそ55〜60%前後にとどまり、却下・取下げとなる案件も多い状況です。
この制度を利用できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した方に限られます。売買で購入した土地や、生前贈与で受け取った土地は対象外です。
また、共有名義の土地でも、共有者全員が共同で申請すれば利用可能です。ただし共有者の中に相続以外の原因で持分を取得した方がいる場合は申請できません。
制度には「門前払い」となる却下事由と、審査の結果不承認になる事由があります。それぞれの条件を具体的に確認しましょう。
国庫帰属が承認されるには、以下のすべてを満たす必要があります。
法務省が公表したデータによると、却下・不承認となった案件のうち、最も多い理由は「建物の存在」が約30%を占めています。次いで「境界未確定」が約20%、「土地の管理コストが過大」が約15%と続きます。
具体的には、以下のような土地が却下されやすい傾向にあります。
北海道では特に、山林や原野などの広大な土地で「管理に過分な費用・労力がかかる」と判断されるケースが多い点に注意が必要です。
制度の利用にはまとまった費用がかかります。事前に全体像を把握しておきましょう。
申請の流れは以下のとおりです。
申請から承認までの期間は、一般的に半年〜1年程度かかります。実地調査のスケジュールによっては、さらに長期化する場合もあります。
承認された場合に納付する負担金は、土地の種別によって計算方法が異なります。
なお、建物がある場合は解体費用も加算されます。木造住宅の解体費は札幌圏で坪あたり3万〜5万円が相場であり、30坪の建物なら90万〜150万円程度の追加負担が生じます。
売却によって処分できる土地であれば、こうした費用をかけずに手放せる可能性があります。不動産の売却にかかる費用の詳細もあわせてご確認ください。
道内には全国的に見ても特殊な土地が多く、制度利用にあたって特有の注意点があります。
北海道では昭和40〜50年代の原野商法で取得された原野や山林が、相続によって次世代に引き継がれるケースが増えています。こうした土地は接道がなく、現況も不明なまま放置されていることが少なくありません。
国庫帰属制度では「管理に過分な費用・労力を要する土地」は不承認となるため、広大な山林や原野は審査で不利になりやすい傾向があります。特に数万㎡を超える山林では、管理コストの問題で却下されるリスクが高まります。
また、道内に多い地目「原野」「山林」「雑種地」は農地法の対象外ですが、地目が「田」「畑」の場合は農地転用許可の問題が別途生じます。地目の確認は申請前に必ず行いましょう。
札幌をはじめとする道内の土地は、積雪による建物の劣化が早い特徴があります。相続した土地に古い建物が残っている場合、屋根の積雪荷重で倒壊リスクがあると判断されれば、国が引き取ることは困難です。
建物の解体が前提となりますが、冬季(11月〜3月)は積雪のため解体工事が難しく、工期やコストが増大する点も北海道特有の事情です。
札幌法務局(札幌市中心部)では、相続土地国庫帰属制度の事前相談を予約制で受け付けています。電話またはウェブ予約で、制度の適用可否について専門の担当者に確認できます。道内各地の法務局でも同様の相談が可能ですので、まずは最寄りの窓口に問い合わせてみましょう。
制度が利用できないと分かった場合でも、土地を手放す方法は複数あります。それぞれの特徴を整理します。
最も現実的な選択肢は、不動産会社への売却や買取依頼です。特に不動産買取は、一般の売却と比べて以下のメリットがあります。
国庫帰属制度では負担金として20万円以上を「支払って」手放すのに対し、買取であれば代金を「受け取って」手放せる可能性があります。特にJR沿線や地下鉄沿線の住宅地であれば、一定の買取価格が期待できます。
相続物件の売却についてはこちらで、相続不動産を売却する際の手続きや注意点を詳しくまとめています。
土地以外の相続財産も不要な場合は、相続放棄も選択肢の一つです。ただし、相続放棄は「すべての相続財産」を放棄する手続きであり、土地だけを選んで放棄することはできません。預貯金や有価証券など他に価値ある財産がある場合は、慎重な判断が求められます。
また、一部の自治体では公共目的での土地の寄付を受け付けていることがあります。ただし自治体側にも管理コストが発生するため、受け入れられるケースは限定的です。道内の自治体でも、接道条件や立地によっては寄付が認められない場合がほとんどです。
ご自身の状況に合わせて、どの方法が適切かを見極めるポイントを整理します。
特に札幌圏の土地であれば、国庫帰属制度を利用するよりも売却や買取のほうが経済的にも時間的にもメリットが大きいケースが多くあります。土地の売却について詳しく見るページもご参照ください。
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に返せる画期的な制度ですが、条件が厳しく、実際の承認率は約55〜60%にとどまります。
相続した土地を放置し続けると、固定資産税の負担が毎年続くだけでなく、2024年4月から義務化された相続登記の申請義務(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料)にも注意が必要です。
当社では、相続した土地の無料査定や、国庫帰属制度と売却のどちらが適切かのご相談を承っております。道内の複雑な土地事情に精通したスタッフが、お客様に最適な方法をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
A: 申請時の審査手数料は土地1筆あたり1万4,000円です。承認後に納付する負担金は、宅地で約20万〜80万円、山林で約25万〜50万円、原野・雑種地は原則20万円が目安となります。
田・畑などの農地は面積に応じて数十万〜100万円超になることもあります。負担金は土地の種別と面積で算定されるため、事前に法務局で見積もりを確認されることをおすすめします。
A: 原則として建物がある土地は申請できません。利用するには、申請者の負担で建物を解体し更地にする必要があります。
札幌圏での木造住宅の解体費用は坪あたり3万〜5万円が相場です。解体費用と負担金を合計すると高額になるため、建物付きのまま買取に対応できる不動産会社への相談も有力な選択肢です。
A: 判断の基準は「土地以外に相続したい財産があるかどうか」です。相続放棄は預貯金・不動産・有価証券など全ての財産を放棄する手続きのため、土地だけを手放したい場合には適しません。
一方、相続財産の全体がマイナスになるような場合は、相続放棄のほうが合理的です。なお相続放棄の期限は相続を知ってから3ヶ月以内ですので、早めの判断が求められます。
A: 不承認となっても、以下のような代替手段で土地を処分できる可能性があります。不動産買取業者への売却が最も一般的で、境界未確定や建物付きでも対応可能な場合があります。
そのほか、隣地所有者への売却交渉、自治体への寄付申出、空き家バンクへの登録なども選択肢です。まずは地域の不動産事情に詳しい専門家に相談し、最適な方法を検討されることをおすすめします。
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