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2026/09/10

コラム

不動産売却の減価償却費の計算方法を解説

不動産売却の減価償却費の計算方法を解説

不動産を売却すると、翌年の確定申告で譲渡所得を計算する必要があります。このとき多くの方が戸惑うのが「減価償却費」の扱いです。

 

 

減価償却の計算を正しく行わないと、取得費が変わり、結果として納める税額が数十万円単位で変わるケースもあります。

 

 

この記事では、札幌エリアで多い木造戸建てやRC造マンションを例に、構造別・用途別の減価償却費の計算方法をステップ形式でわかりやすく解説します。お手元の売買契約書をご用意いただければ、読みながらご自身の物件で試算が可能です。

 

 

 

不動産売却で減価償却が必要な理由

 

不動産売却の利益(譲渡所得)を計算するには、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引きます。この取得費を正しく求めるために、減価償却の計算が欠かせません。

 

 

 

譲渡所得の計算と取得費の関係

 

譲渡所得の基本的な計算式は以下のとおりです。

  • 譲渡所得:売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
  • 取得費:購入代金 + 購入時の諸費用 − 減価償却費
  • 譲渡費用:仲介手数料・測量費・解体費など売却にかかった費用

建物は年数の経過とともに価値が下がるため、購入時の金額をそのまま取得費にはできません。経過年数に応じた減価償却費を差し引いた金額が、税務上の取得費となります。

 

 

 

減価償却費が税額に与える影響

 

減価償却費が大きくなるほど取得費は小さくなり、譲渡所得が増えて税額も上がります。たとえば減価償却費が500万円の場合、所有期間5年超(長期譲渡所得)であれば税率約20.315%が適用され、約101万円の税額差が生じます。

 

 

逆に言えば、計算を誤って減価償却費を過大に見積もると、本来より多くの税金を納めてしまうことになります。正確な計算が重要です。

 

 

売却にかかる費用全体を把握したい方は、売却の方法と費用の詳細もあわせてご確認ください。

 

 

 

減価償却費の計算手順3ステップ

 

減価償却費の計算は、以下の3つのステップで進めます。計算式を丸暗記する必要はなく、順番に数値を当てはめれば誰でも算出できます。

 

 

 

ステップ1:建物取得費の確認

 

売買契約書や領収書から、建物部分の購入価格を確認します。土地と建物の合計金額しか記載がない場合は、以下の方法で按分します。

  • 固定資産税評価額で按分する方法(一般的に多い)
  • 消費税額から逆算する方法(売主が課税事業者の場合)
  • 標準建築単価を用いる方法(契約書がない場合の補助的手段)

 

 

 

ステップ2:耐用年数と償却率の確認

 

建物の構造と用途(マイホームか賃貸物件か)によって、適用する耐用年数が異なります。非事業用(マイホーム)の場合は、法定耐用年数の1.5倍の年数を使います。

 

 

耐用年数が決まったら、国税庁の「減価償却資産の償却率表」から旧定額法の償却率を確認します。非事業用の不動産売却では、原則として旧定額法を使用します。

 

 

 

ステップ3:定額法による計算式への当てはめ

 

計算式は次のとおりです。

  • 減価償却費 = 建物取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

0.9を掛けるのは、建物には残存価額10%があるためです。経過年数は、取得日から売却日までの年数を6か月以上の端数は1年に切り上げて計算します。

 

 

なお、減価償却費が建物取得費の95%を超える場合は、建物取得費 × 95%が上限となります。

 

 

 

構造別シミュレーション:木造・鉄骨・RC

 

ここでは、マイホーム(非事業用)を売却する場合を想定し、構造別に具体的な計算例を示します。ご自身の物件と近い条件を参考にしてください。

 

 

 

木造戸建て(築30年)の計算例

 

木造住宅の法定耐用年数は22年、非事業用では1.5倍の33年となり、旧定額法の償却率は0.031です。

  • 建物取得費:1,500万円
  • 経過年数:30年
  • 減価償却費:1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 30年 = 約1,255万円
  • 建物の取得費(税務上):1,500万円 − 1,255万円 = 約245万円

築30年の木造戸建てでは、建物の取得費が購入時の約16%まで減少します。取得費が小さくなる分、譲渡所得が大きくなる点に注意が必要です。

 

 

戸建て売却をご検討中の方は、戸建て売却の流れもご参照ください。

 

 

 

RC造マンション(築25年)の計算例

 

RC造(鉄筋コンクリート造)の法定耐用年数は47年、非事業用では1.5倍の70年となり、旧定額法の償却率は0.015です。

  • 建物取得費:2,000万円
  • 経過年数:25年
  • 減価償却費:2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 25年 = 675万円
  • 建物の取得費(税務上):2,000万円 − 675万円 = 1,325万円

RC造は耐用年数が長いため、同じ築年数でも木造より減価償却費が小さくなります。築25年でも取得費の約66%が残る計算です。

 

 

 

鉄骨造(築20年)の参考値

 

鉄骨造は骨格材の肉厚によって耐用年数が異なります。一般的な住宅用(肉厚3mm超4mm以下)の場合、法定耐用年数は27年、非事業用では40年、償却率は0.025です。

  • 建物取得費:1,800万円
  • 経過年数:20年
  • 減価償却費:1,800万円 × 0.9 × 0.025 × 20年 = 810万円
  • 建物の取得費(税務上):1,800万円 − 810万円 = 990万円

鉄骨造は木造とRC造の中間に位置する結果となります。ご自身の物件の構造は、登記簿謄本の「構造」欄でご確認ください。

 

 

 

マイホームと収益物件で異なる耐用年数と償却率

 

減価償却の計算で見落としやすいのが、非事業用(マイホーム)と事業用(賃貸物件)で適用する耐用年数が異なる点です。ここでは両者の違いを比較表で整理します。

 

 

 

非事業用(マイホーム)の1.5倍耐用年数ルール

 

自宅として使用していた不動産を売却する場合、法定耐用年数の1.5倍の年数を使います。これは居住用資産の価値減少が事業用より緩やかとみなされるためです。

  • 木造:事業用22年 → 非事業用33年(償却率 0.031)
  • 鉄骨造:事業用27年 → 非事業用40年(償却率 0.025)
  • RC造:事業用47年 → 非事業用70年(償却率 0.015)

 

 

 

事業用(賃貸物件)との計算結果の比較

 

同じ木造・建物取得費1,500万円・築20年で比較すると、減価償却費の差は大きく開きます。

  • 非事業用:1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 20年 = 約837万円
  • 事業用:1,500万円 × 0.9 × 0.046 × 20年 = 約1,242万円

事業用の方が減価償却費は約405万円大きくなり、その分だけ取得費が小さくなります。収益物件の売却をお考えの方は、収益物件の売却についてで詳細をご確認ください。

 

 

賃貸として貸し出していた期間とマイホームとして使用していた期間がある場合は、それぞれの期間に応じて別々に減価償却費を計算するのが一般的です。

 

 

 

3,000万円特別控除など税制優遇との併用ポイント

 

不動産売却では減価償却の計算に加えて、各種税制優遇の適用可否も重要です。減価償却と他の特例がどのように関わるかを整理します。

 

 

 

減価償却と特別控除の適用順序

 

マイホームを売却した場合、一定の要件を満たせば最大3,000万円の特別控除が適用できます。適用の順序は以下のとおりです。

  • まず取得費から減価償却費を差し引いて正しい取得費を算出する
  • 売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算する
  • 算出された譲渡所得から3,000万円を控除する

つまり、減価償却費の計算は特別控除の前段階として行います。減価償却費を正確に計算した結果、譲渡所得が3,000万円以下であれば、所得税・住民税ともに課税されないケースも多くあります。

 

 

 

取得費加算の特例が使えるケース

 

相続で取得した不動産を売却する場合、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります。この特例は減価償却後の取得費に上乗せできるため、併用することで譲渡所得をさらに圧縮できる可能性があります。

 

 

ただし、取得費加算の特例は相続開始から3年10か月以内に売却する必要があるなど、適用要件が厳格です。該当する方は早めに税理士へ相談されることをおすすめします。

 

 

 

札幌の築古物件における減価償却の実務ポイント

 

札幌の不動産市場では、地下鉄沿線を中心に築30〜40年のRC造マンションが多く流通しています。また、JR沿線や市街地エリアでは築古の木造戸建ても少なくありません。当社が日々の売却相談で感じる実務上のポイントをお伝えします。

 

 

 

地下鉄沿線に多いRC造マンションの傾向

 

札幌の地下鉄沿線エリアでは、1980年代〜1990年代に建築されたRC造マンションの売却相談が増えています。築35年のRC造マンションでも、非事業用の耐用年数は70年のため、まだ償却途中にあるケースがほとんどです。

 

 

北海道の物件は寒冷地仕様で断熱材や二重窓が施されていることが多く、建物取得費に占める設備費用の割合が本州の物件より高い傾向があります。建物と土地の按分を行う際は、この点を考慮することが大切です。

 

 

 

建物取得費が不明な場合の概算取得費の使い方

 

築古物件では、購入時の売買契約書が見つからないケースが少なくありません。この場合、売却価格の5%を概算取得費として使う方法があります。

 

 

たとえば1,500万円で売却した場合、概算取得費は75万円です。実際の購入価格が判明している場合と比べて取得費が大幅に小さくなるため、譲渡所得が増え、税負担が重くなることがあります。

 

 

当社では、売買契約書が見つからない場合でも、登記簿の抵当権設定額や当時の固定資産税評価額などから購入価格を推定できないか確認するようお伝えしています。札幌のマンション売却に関する詳しい流れは、札幌のマンション売却をご覧ください。

 

 

 

確定申告での減価償却費の記載方法

 

減価償却費を正しく計算できたら、確定申告書への記載が最後のステップです。書類の記入箇所と、よくある間違いを確認しておきましょう。

 

 

 

譲渡所得の内訳書への記入箇所

 

不動産売却の確定申告では、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」を使用します。減価償却費の記入箇所は以下のとおりです。

  • 2面「取得費」欄:建物の購入代金を記入
  • 同欄の減価償却費:計算した減価償却費を記入
  • 差引取得費:購入代金から減価償却費を差し引いた金額を記入

建物と土地を分けて記入する必要があるため、按分計算の根拠資料も手元に準備しておくとスムーズです。

 

 

 

計算間違いを防ぐチェックポイント

 

確定申告の際に多い間違いを3つ挙げます。提出前にご確認ください。

  • 耐用年数の誤り:非事業用なのに事業用の耐用年数を使ってしまう
  • 経過年数の端数処理:6か月未満は切り捨て、6か月以上は切り上げ
  • 0.9の掛け忘れ:残存価額10%を考慮する係数を忘れるケース

計算に不安がある場合は、税務署の無料相談窓口や税理士に確認されることをおすすめします。特に札幌市内では、道内の不動産事情に詳しい税理士と連携するとより安心です。

 

 

 

よくある質問

 

 

 

Q: マイホームを売却する場合でも減価償却の計算は必要ですか?

 

A: 必要です。マイホーム(非事業用)であっても、譲渡所得の計算では建物の取得費から減価償却費を差し引きます。

 

 

非事業用の場合は法定耐用年数の1.5倍を使うため、事業用より減価償却費は小さくなりますが、省略することはできません。

 

 

 

Q: 建物の取得費がわからない場合、減価償却費はどう計算すればよいですか?

 

A: 売買契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を概算取得費とする方法があります。この場合、減価償却費の計算自体は不要になります。

 

 

ただし概算取得費は実際の購入価格より大幅に小さくなることが多く、税負担が増える傾向があります。登記簿の抵当権設定額などから購入価格を推定できないか、まず確認してみてください。

 

 

 

Q: 築30年の木造戸建てを売却すると減価償却費はいくらになりますか?

 

A: 非事業用・木造の耐用年数33年、償却率0.031で計算します。建物取得費が1,500万円の場合、1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 30年 = 約1,255万円です。

 

 

建物の取得費は約245万円まで減少し、購入時の約16%しか残りません。売却益が出やすくなるため、3,000万円特別控除の適用可否もあわせて確認することをおすすめします。

 

 

 

Q: 減価償却で取得費が減ると譲渡所得税はどれくらい増えますか?

 

A: 所有期間が5年超(長期譲渡所得)の場合、税率は約20.315%です。たとえば減価償却費が500万円であれば、取得費が500万円減る分、譲渡所得が増え、税額は約101万円増える計算になります。

 

 

所有期間が5年以下(短期譲渡所得)の場合は税率が約39.63%となり、同じ500万円でも税額増加は約198万円と大きくなります。

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