2025年4月の建築物省エネ法改正により、すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務化されました。この制度変更は、中古住宅の売却市場にも大きな影響を及ぼしています。
「自宅は省エネ基準を満たしているのか」「適合していない場合、査定額は下がるのか」。こうした不安を抱える売主様が増えています。
この記事では、省エネ基準の義務化が不動産売却にどのような影響を与えるのか、適合・未適合それぞれの対処法を具体的な数値とともに解説します。特に札幌など寒冷地の住宅が持つ優位性についても詳しくお伝えします。
まず、省エネ基準の適合義務化の内容を正確に理解しておきましょう。
2025年4月に施行された改正建築物省エネ法では、原則としてすべての新築住宅・非住宅建築物に対して、省エネ基準への適合が義務となりました。それ以前は、延べ面積300㎡以上の中規模建築物のみが対象でしたが、改正後は小規模な戸建て住宅も含まれます。
省エネ基準の具体的な指標は、主に以下の2つです。
重要な点として、この適合義務化は新築住宅が対象です。既存住宅(中古住宅)については、売却時に省エネ基準への適合が法律上義務づけられているわけではありません。
ただし、2024年4月から始まった「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」により、不動産広告に省エネ性能ラベルの表示が努力義務となっています。この制度により、買主が省エネ性能を比較しやすくなったため、未適合物件は市場での競争力に影響が出始めています。
省エネ基準の義務化は、中古住宅の市場評価にも変化をもたらしています。
国土交通省の調査によると、省エネ性能が高い住宅は一般的な住宅と比較して約5〜10%程度高い価格で取引される傾向が見られます。断熱等級5以上(ZEH水準)の住宅では、さらに上乗せされるケースもあります。
一方、省エネ基準未適合の住宅は、築年数や立地条件が同等であっても査定額が低く抑えられる傾向が強まっています。特に築30年以上の住宅では、断熱等級2以下と評価される場合があり、買主から改修費用分の値引きを求められることも少なくありません。
住宅金融支援機構の調査では、住宅購入者の約72%が「省エネ性能を重視する」と回答しています。光熱費への関心が高まっていることが背景にあります。
さらに、以下のような制度面の後押しもあり、省エネ性能の高い住宅への需要は今後も増加が見込まれます。
省エネ基準を満たしていない住宅でも、売却の方法は複数あります。状況に応じた最適な選択が重要です。
売却前に断熱改修を行い、省エネ基準に適合させてから売りに出す方法があります。主な改修内容と費用の目安は以下のとおりです。
改修費用に対して、売却価格の上昇幅が上回るかどうかが判断のポイントです。一般的に、築20年以内の物件で立地条件が良い場合は、改修による査定額アップが費用の1.2〜1.5倍になるケースがあります。
一方、築30年超の物件では改修しても査定額への反映が限定的で、費用を回収できない場合もあります。物件の状態と市場価値を総合的に判断することが大切です。
省エネ基準未適合でも、現状のまま売却する選択肢は十分にあります。その場合は、以下のような工夫が効果的です。
売却の方法と費用についてはこちらで、仲介と買取それぞれのメリット・費用を詳しく解説しています。
法改正に伴い、不動産売却時に求められる情報開示のあり方も変わりつつあります。
2024年4月から開始された省エネ性能表示制度では、販売・賃貸の広告時に省エネ性能ラベルの表示が努力義務とされています。このラベルには、断熱性能(等級1〜7)とエネルギー消費量の目安が星の数で示されます。
現時点では「努力義務」ですが、国土交通省は段階的な義務化を検討しており、将来的には表示が必須となる可能性があります。早い段階から対応しておくことで、売却活動をスムーズに進められます。
省エネ基準に関連して、売却時に準備しておくと有利になる書類があります。
これらの書類が手元にない場合でも、建築時の仕様から性能を推定できることがあります。まずは専門家に相談することをおすすめします。
北海道、特に札幌の住宅は、省エネ基準の観点で全国的に見ても有利な立場にあります。
札幌は省エネ基準の地域区分で「2地域」に該当し、求められるUA値は0.46W/㎡K以下です。これは本州の多くの地域(5〜7地域:UA値0.60〜0.87)と比べて厳しい基準ですが、道内の住宅は長年にわたり寒冷地仕様で建てられてきた歴史があります。
北海道の住宅は1990年代以降、高断熱・高気密住宅が標準的に普及してきました。そのため、築20年程度の住宅でも省エネ基準を満たしているケースが少なくありません。本州では築浅でも基準未適合の物件が多い中、これは札幌の不動産にとって大きなアドバンテージです。
札幌の住宅が持つ省エネ性能の高さは、売却時に積極的にアピールすべきポイントです。
地下鉄沿線やJR沿線の利便性が高いエリアでは、省エネ性能と立地の両面で高い評価を得やすい傾向にあります。札幌の戸建て売却についてはこちらもあわせてご覧ください。
省エネ基準の動向を踏まえ、不動産売却を成功させるための具体的なポイントを整理します。
売却活動を始める前に、以下の項目を確認しておくことをおすすめします。
省エネ基準への適合状況によって、売却方法の選択も変わってきます。
仲介が向いているケースは、省エネ基準に適合している物件や、適合に近い性能を持つ物件です。性能をアピールすることで、相場に近い価格、あるいはそれ以上での売却が期待できます。
買取が向いているケースは、省エネ基準から大きく乖離している物件や、改修費用が売却価格の上昇を上回ると見込まれる場合です。買取業者はリフォームを前提に査定するため、省エネ性能の不足が直接的なマイナス要因になりにくい場合があります。
市街地エリアの空き家や、相続で取得した住宅の売却でお悩みの方は、空き家・空き地の売却についてはこちらをご参照ください。当社では物件の状態に応じた最適な売却プランをご提案しています。
A: 売れなくなることはありません。2025年の適合義務化は新築住宅が対象であり、既存の中古住宅は省エネ基準を満たしていなくても売却は可能です。
ただし、買主の省エネ意識が高まっているため、未適合物件は市場での評価に影響が出る傾向があります。適切な価格設定と物件の強みのアピールが重要です。
A: 物件の築年数・立地・状態によって異なりますが、省エネ基準適合物件は未適合物件と比べて約5〜10%程度高く評価される傾向があります。
今後、省エネ性能表示制度の浸透に伴い、この価格差はさらに広がる可能性があります。正確な査定額は個別の物件調査が必要です。
A: 一概には言えず、費用対効果による個別判断が重要です。改修費用が約150万〜350万円かかるのに対し、売却価格への反映が限定的な場合は、現状のまま売却した方が手取り額で有利になることもあります。
築年数が浅く立地が良い物件では改修が効果的ですが、築30年超の物件では現状売却や買取の方が合理的なケースが多いです。
A: はい、あります。北海道では寒冷地仕様として高い断熱性能の住宅が早くから普及しており、1990年代後半以降に建てられた住宅は現行の省エネ基準に適合している場合があります。
特に道内の住宅メーカーが手がけた物件は、全国基準を上回る断熱性能を備えていることが少なくありません。設計図書や住宅性能評価書で確認することをおすすめします。
あわせてご覧ください
同じテーマの記事