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2026/08/20

コラム

不動産売却の減価償却と取得費の計算方法

不動産売却の減価償却と取得費の計算方法

不動産を売却すると、譲渡所得に対して税金がかかります。このとき、税額を大きく左右するのが「減価償却費」と「取得費」の計算です。

 

 

正しく計算すれば納める税金を抑えられる一方、誤った計算や書類不備があると、本来より多くの税金を支払ってしまうケースも少なくありません。

 

 

この記事では、建物構造別の償却率早見表や、取得費が不明な場合のシミュレーション、札幌の築古物件での具体的な計算例まで、実務に役立つ情報をまとめました。

 

 

 

不動産売却で減価償却と取得費の計算が必要な理由

 

不動産売却で利益が出ると「譲渡所得税」が課されます。まずは計算の全体像を押さえましょう。

 

 

 

譲渡所得の計算式と税金の仕組み

 

譲渡所得は、次の計算式で求めます。

 

 

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

 

 

ここでいう「取得費」とは、その不動産を購入したときの費用から減価償却費を差し引いた金額です。つまり、減価償却費が大きくなるほど取得費は小さくなり、結果として譲渡所得が増えて税金も高くなります。

 

 

税率は所有期間によって異なり、5年以下の短期譲渡は約39.63%、5年超の長期譲渡は約20.315%です。所有期間の判定は売却した年の1月1日時点で行います。

 

 

 

取得費の正確な算出が節税の鍵になる

 

取得費を正確に算出できれば、譲渡所得を適正に圧縮でき、納税額を抑えられます。逆に、購入時の書類がなく取得費を証明できない場合は、売却価格の5%しか取得費として認められません。

 

 

たとえば3,000万円で売却した場合、概算取得費はわずか150万円です。実際の購入価格が2,000万円であれば、取得費の差額1,850万円分だけ余計に課税されてしまいます。

 

 

売却の方法や費用の全体像については、売却の方法と費用の詳細もあわせてご確認ください。

 

 

 

建物構造別の耐用年数と償却率の早見表

 

減価償却費の計算に欠かせないのが、建物の構造ごとに定められた耐用年数と償却率です。非事業用(マイホーム)と事業用では数値が異なりますので、正しい区分を確認しましょう。

 

 

 

木造・鉄骨・RC造の耐用年数と償却率一覧

 

非事業用の居住用建物の場合、耐用年数は法定耐用年数の1.5倍として計算します。以下が主な構造別の数値です。

  • 木造:法定耐用年数22年 → 非事業用33年(償却率0.031)
  • 軽量鉄骨造(骨格材3mm超4mm以下):法定耐用年数27年 → 非事業用40年(償却率0.025)
  • 重量鉄骨造:法定耐用年数34年 → 非事業用51年(償却率0.020)
  • RC造(鉄筋コンクリート):法定耐用年数47年 → 非事業用70年(償却率0.015)

事業用の場合は法定耐用年数をそのまま使い、定額法の償却率も異なります。たとえば事業用木造の償却率は0.046、事業用RC造は0.022です。

 

 

 

非事業用と事業用で異なる計算の注意点

 

自宅として使っていた不動産を売却する場合は「非事業用」の耐用年数と償却率を使います。一方、賃貸に出していた物件は「事業用」の数値で計算します。

 

 

途中で自宅から賃貸に転用した場合は、それぞれの期間を分けて計算する点に注意が必要です。判断に迷う場合は、税理士への相談をおすすめします。

 

 

 

減価償却費の計算ステップを実例で解説

 

ここからは、具体的な数値を使って減価償却費の計算手順を見ていきます。マンションと戸建ての両方で実例を示します。

 

 

 

購入価格から建物価格を分離する方法

 

不動産の購入価格には土地と建物の両方が含まれています。減価償却の対象は建物部分のみのため、まず建物価格を分離する作業が必要です。

 

 

建物価格を算出する主な方法は以下のとおりです。

  • 売買契約書に土地・建物の内訳記載がある場合:そのまま使用
  • 内訳がない場合:固定資産税評価額の按分比率で算出
  • 新築時の建築費がわかる場合:建物の標準的建築価額表から推計

マンションの場合、土地の持分割合は登記簿で確認できます。一般的に、マンションは購入価格のうち建物割合が40%〜60%程度になるケースが多いです。

 

 

 

計算式に当てはめて減価償却費を算出する手順

 

減価償却費の計算式は次のとおりです。

 

 

減価償却費 = 建物購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

 

 

【計算例①:RC造マンション】購入価格3,500万円(うち建物部分1,750万円)、築20年で売却する場合を考えます。

 

 

減価償却費 = 1,750万円 × 0.9 × 0.015 × 20年 = 472万5,000円

 

 

したがって、取得費の建物部分は1,750万円 − 472万5,000円 = 1,277万5,000円となります。

 

 

【計算例②:木造戸建て】購入価格2,500万円(うち建物部分1,200万円)、築25年で売却する場合です。

 

 

減価償却費 = 1,200万円 × 0.9 × 0.031 × 25年 = 837万円

 

 

建物の取得費は1,200万円 − 837万円 = 363万円です。木造は償却率が高いため、築年数が経つと建物の取得費が大幅に減少する点に注目してください。

 

 

マンションの売却を検討されている方は、マンション売却についてはこちらもご覧ください。

 

 

 

取得費が不明な場合の概算取得費と実額取得費の比較

 

購入時の契約書や領収書がない場合、取得費の計算方法が変わります。概算法と実額法の違いを税額シミュレーションで比較してみましょう。

 

 

 

概算取得費(売却価格の5%)の計算と注意点

 

売買契約書を紛失するなどして購入価格を証明できない場合、税法上は売却価格の5%を取得費とする「概算取得費」が適用されます。

 

 

たとえば売却価格が2,800万円の場合、概算取得費は140万円です。実際の購入価格がいくらであっても、証明できなければこの金額で計算されてしまいます。

 

 

ただし、概算取得費と実額取得費の有利な方を選択できるため、たとえ一部の書類しか残っていなくても実額を立証する努力は大切です。

 

 

 

実額取得費との税額差シミュレーション

 

以下の条件で、概算法と実額法の税額差をシミュレーションします。

  • 売却価格:2,800万円
  • 実際の購入価格(建物+土地):2,200万円
  • 減価償却費:400万円
  • 譲渡費用:100万円
  • 所有期間:10年(長期譲渡 税率約20.315%)

【概算取得費を使った場合】

 

 

譲渡所得 = 2,800万円 −(140万円 + 100万円)= 2,560万円

 

 

税額 = 2,560万円 × 20.315% = 約520万円

 

 

【実額取得費を使った場合】

 

 

取得費 = 2,200万円 − 400万円 = 1,800万円

 

 

譲渡所得 = 2,800万円 −(1,800万円 + 100万円)= 900万円

 

 

税額 = 900万円 × 20.315% = 約183万円

 

 

この例では、実額取得費を使うことで約337万円の節税になります。購入時の書類を探す価値がいかに大きいか、おわかりいただけるのではないでしょうか。

 

 

 

札幌の築古物件における減価償却計算の実例

 

札幌圏では築30年を超える木造戸建てや旧耐震マンションの売却相談が増えています。道内特有の事情を踏まえた計算例をご紹介します。

 

 

 

築30年超の木造戸建てでの計算例

 

札幌市街地エリアの築35年の木造戸建てを想定します。

  • 購入価格(1991年):3,200万円(うち建物1,600万円、土地1,600万円)
  • 売却価格(2026年):1,800万円
  • 経過年数:35年(ただし非事業用木造の耐用年数は33年のため、経過年数は33年が上限

減価償却費 = 1,600万円 × 0.9 × 0.031 × 33年 = 約1,472万円

 

 

建物の取得費は1,600万円 − 1,472万円 = 128万円まで減少します。ただし、建物取得費の下限は「建物購入価格の5%」とされているため、80万円(1,600万円×5%)を下回ることはありません。

 

 

北海道の木造住宅は築年数が経つほど建物の取得費がほぼゼロに近づくため、譲渡所得が想定以上に大きくなるケースがあります。

 

 

 

旧耐震マンションや寒冷地設備費用の取得費算入

 

JR沿線や地下鉄沿線に多い旧耐震基準(1981年以前)のRC造マンションも、札幌では売却対象として多く見られます。RC造は耐用年数が長いため、築40年でも減価償却費が建物価格を超えないケースがあります。

 

 

たとえば、築40年のRC造マンション(建物部分1,000万円)の場合、減価償却費は1,000万円 × 0.9 × 0.015 × 40年 = 540万円で、建物取得費は460万円残ります。

 

 

また、北海道の住宅では以下のような寒冷地特有の設備費用が取得費に算入できる可能性があります。

  • 二重窓・断熱サッシの設置費用:建物の一部として取得費に含められるのが一般的です
  • ロードヒーティング:建物付属設備として計上できる場合があります
  • 融雪槽・融雪機:土地の付属設備として取得費に含められるケースがあります

これらは購入時または購入後に設置した際の領収書が残っていれば、取得費に加算して譲渡所得を圧縮できます。戸建ての売却について詳しくは、戸建て売却の詳細はこちらをご覧ください。

 

 

 

取得費に含められる費用・含められない費用

 

取得費に算入できる費用は購入価格だけではありません。判断に迷いやすい項目を整理します。

 

 

 

リフォーム費用や仲介手数料の扱い

 

取得費に含められる主な費用は以下のとおりです。

  • 購入時の仲介手数料:取得費に含められます
  • 登録免許税・不動産取得税:取得費に含められます
  • 売買契約書の印紙代:取得費に含められます
  • 資本的支出に該当するリフォーム費用:取得費に含められます(例:間取り変更、増築、耐震補強など)
  • 測量費・整地費用:取得費に含められます

一方、取得費に含められない費用もあります。

  • 修繕費:壁紙の張り替え、水栓の交換など現状維持のための費用は対象外です
  • 固定資産税・都市計画税:毎年の維持費であり取得費には含まれません
  • 引越し費用:取得費の対象外です
  • 住宅ローンの利息:原則として取得費には含められません

資本的支出と修繕費の区分は判断が難しいケースもあるため、金額が30万円を超える工事については税理士に確認されることをおすすめします。

 

 

 

相続で取得した不動産の取得費の考え方

 

相続で取得した不動産の場合、取得費と取得時期は被相続人(亡くなった方)のものを引き継ぎます。つまり、被相続人が購入した価格がそのまま取得費の基礎になります。

 

 

経過年数も被相続人の購入時点から数えるため、相続時点からではない点に注意が必要です。たとえば、親が30年前に購入した木造住宅を相続して5年後に売却する場合、経過年数は33年(上限)で計算します。

 

 

相続物件の売却に関する詳しい情報は、相続物件の売却についてのページをご確認ください。

 

 

 

確定申告に向けた準備と活用できる特例

 

減価償却費と取得費の計算が終わったら、確定申告の準備に進みます。必要書類と活用できる特例を確認しましょう。

 

 

 

譲渡所得の申告に必要な書類一覧

 

不動産売却の確定申告では、以下の書類が必要です。

  • 確定申告書(第一表・第三表)
  • 譲渡所得の内訳書(税務署またはe-Taxで入手)
  • 売買契約書のコピー(購入時・売却時の両方)
  • 仲介手数料の領収書
  • 登記簿謄本
  • 固定資産税評価証明書(土地・建物の按分計算に使用)

申告期限は売却した翌年の2月16日から3月15日までです。書類の準備に時間がかかるため、売却が完了したら早めに取りかかることをおすすめします。

 

 

 

3,000万円特別控除など主な特例の概要

 

譲渡所得から控除を受けられる特例がいくつかあります。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除:マイホームの売却で最大3,000万円を譲渡所得から控除できます。所有期間の制限はありません
  • 10年超所有の軽減税率の特例:所有期間が10年を超える場合、6,000万円以下の譲渡所得部分に約14.21%の軽減税率が適用されます
  • 相続空き家の3,000万円特別控除:一定の要件を満たす相続した空き家の売却に適用される控除です

これらの特例は併用できるものとできないものがあります。また、適用には細かな要件があるため、一般的には税理士や税務署への事前相談が推奨されます。

 

 

 

よくある質問

 

 

 

Q: 購入時の売買契約書を紛失した場合、取得費はどうやって計算すればよいですか?

 

A: 契約書がない場合、原則として売却価格の5%が概算取得費として適用されます。ただし、購入当時の通帳の振込記録、住宅ローンの返済予定表、不動産会社の販売パンフレットなどの代替資料で購入価格を立証できれば、実額取得費として認められる場合があります。

 

 

代替資料の有効性はケースによって異なるため、税務署や税理士への相談をおすすめします。

 

 

 

Q: 木造とRC造で減価償却費の計算結果はどのくらい違いますか?

 

A: 同じ建物価格1,500万円・築25年の非事業用で比較すると、木造の減価償却費は約1,046万円(償却率0.031)、RC造は約506万円(償却率0.015)となります。木造はRC造の約2倍の減価償却費が発生します。

 

 

この差額約540万円がそのまま取得費の差となり、長期譲渡の場合は約110万円の税額差につながります。

 

 

 

Q: リフォーム費用や仲介手数料は取得費に含めることができますか?

 

A: 購入時の仲介手数料は取得費に含められます。リフォーム費用は「資本的支出」に該当する場合のみ取得費に算入できます。間取り変更や増築、耐震補強工事などが該当します。

 

 

一方、壁紙の張り替えや設備の交換など現状維持のための修繕費は取得費に含めることができません。

 

 

 

Q: 相続した不動産の取得費は被相続人の購入価格を引き継げますか?

 

A: はい、相続で取得した不動産の取得費は、被相続人(亡くなった方)の購入価格をそのまま引き継ぐことができます。取得時期についても被相続人の購入時点を引き継ぐため、長期譲渡の要件判定にも有利に働く場合があります。

 

 

ただし、減価償却費の計算では被相続人の購入時点からの経過年数で計算するため、築古物件では建物の取得費がかなり小さくなる点にご注意ください。

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