「相続した土地を手放したいが、買い手が見つからない」。こうしたお悩みに対応するため、2023年4月に相続土地国庫帰属制度がスタートしました。
しかし制度開始から3年が経過した2026年現在、申請すれば誰でも土地を国に引き取ってもらえるわけではありません。審査の条件は厳しく、費用も発生します。
この記事では、制度の条件と費用を網羅的に解説したうえで、「国庫帰属と売却、どちらが得か」を不動産会社の実務視点からお伝えします。
相続土地国庫帰属制度の基本的な仕組みと、なぜこの制度が作られたのかを整理します。
全国で所有者不明の土地が増え続けており、その面積は約410万ヘクタール(九州全土に匹敵)に達するとされています。管理されない土地は周辺環境の悪化や公共事業の障害となり、社会的な問題になっていました。
こうした背景から、相続や遺贈によって取得した土地を国に引き渡せる制度が2023年4月に創設されました。対象となるのは、相続や遺贈で土地を取得した方です。
売買で取得した土地や、法人が所有する土地は対象外となります。また、共有地の場合は共有者全員が共同で申請する点にも注意が必要です。
国庫帰属の手続きは以下のステップで進みます。
申請から承認までの審査期間は、一般的に半年〜1年程度かかります。
制度開始から約3年間で全国の申請件数は累計約2万件を超えましたが、承認に至ったのはそのうち約6割程度とされています。残りの約4割は却下・不承認・取下げとなっており、通過率は決して高くありません。
制度を利用するには、土地が一定の条件を満たす必要があります。却下される要件を正しく理解しておくことが重要です。
以下に該当する土地は、申請の段階で却下されます。
これらは「門前払い」の要件であり、1つでも該当すると審査自体が行われません。
申請が受理されても、実地調査の結果、不承認となるケースがあります。法務省の公表データによると、不承認理由で多いのは以下のパターンです。
特に多い却下・不承認理由は「建物の存在」と「境界不明」で、全体の約5割を占めるとされています。申請前に建物解体と境界確定を済ませることが、承認への近道です。
国庫帰属制度は無料ではありません。審査手数料と負担金の2つの費用が発生します。
審査手数料は土地1筆あたり1万4,000円で、申請時に納付します。この手数料は審査結果にかかわらず返還されません。
承認後に納める負担金は、土地の種目・面積・立地条件によって算定されます。負担金は「10年分の土地管理費用相当額」という考え方に基づいて計算されます。
地目別の負担金の目安は以下のとおりです。
さらに建物がある場合は、申請前に自費で解体する必要があります。木造住宅の解体費用は一般的に150万〜300万円程度です。負担金と合わせると、制度利用にかかる総コストは想像以上に大きくなることがあります。
売却にかかる費用と比較したい方は、売却の方法と費用のページもあわせてご覧ください。
相続した土地の処分方法は、国庫帰属だけではありません。売却や相続放棄と比較して、最も有利な選択肢を見極めることが大切です。
不動産会社の実務視点から、判断のポイントを整理します。以下のフローで考えるとわかりやすいです。
たとえば札幌近郊の200㎡の宅地で、建物解体費が200万円・負担金が80万円だとします。合計約280万円を支払って国に引き渡すことになります。
一方、同じ土地を不動産会社に売却すれば、仮に300万円〜500万円で売れる可能性があります。この場合、売却のほうが経済的に有利です。
まずは土地の査定額を知ることが、判断の第一歩になります。相続物件の売却については、相続物件の売却ページで詳しくご案内しています。
相続放棄は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。最大の注意点は、土地だけでなくすべての遺産を放棄しなければならないことです。
預貯金や有価証券など他にプラスの財産がある場合、相続放棄は大きな損失につながります。「土地だけ手放したい」という場合は、国庫帰属制度か売却・買取を選ぶのが合理的です。
道内には全国的に見ても特殊な土地事情があり、国庫帰属制度の利用にあたって特有のリスクがあります。
北海道では1970〜80年代の原野商法により、山間部や湿地帯の土地を高額で購入させられた被害者が多数存在します。こうした土地は現地にアクセスする道路すらないケースが多く、国庫帰属の審査でも不承認となるリスクが高いです。
また、道内には市街化調整区域に指定された土地も多く、開発が制限されているため買い手がつきにくい傾向があります。市街化調整区域の土地処分にお悩みの方は、市街化調整区域の売却ページもご確認ください。
札幌をはじめ北海道の積雪寒冷地では、建物の解体費用が本州より割高になる傾向があります。主な理由は以下のとおりです。
道内での木造住宅の解体費用は200万〜400万円に達することもあり、本州平均より2〜3割高いケースが珍しくありません。この解体費用に負担金を加えると、制度利用のトータルコストは数百万円になる場合もあります。
費用を払って国に引き渡すより、買取で現金化するほうが合理的なケースは少なくありません。
国庫帰属の条件に合わなかった場合でも、土地を手放す方法はあります。売却・買取という選択肢を検討してみてください。
不動産会社への売却や買取には、国庫帰属にはないメリットがあります。
国庫帰属では「お金を払って手放す」のに対し、買取では「お金をもらって手放せる」という根本的な違いがあります。
「こんな土地は売れないだろう」と思われがちな物件でも、不動産会社によっては買取が可能です。当社でも、JR沿線や地下鉄沿線から離れた郊外の土地や、市街化調整区域の土地などの買取実績があります。
原野商法の被害地や、長年放置された空き地であっても、まずは査定に出してみることをおすすめします。査定は無料で行っておりますので、費用のご負担はありません。
ワケあり物件の売却・買取については、ワケあり物件の売却ページで実績をご紹介しています。
A: 負担金は地目や面積によって異なります。市街地エリア外の宅地・原野・雑種地は一律20万円、市街地エリアの宅地200㎡では約80万円が目安です。
山林は面積に応じた算定で、3,000㎡で約30万円前後となります。別途、審査手数料として1筆あたり1万4,000円が必要です。
A: 建物がある土地は申請できません。制度を利用するには、事前に建物を解体して更地にする必要があります。
北海道の積雪寒冷地では解体費用が200万〜400万円かかることもあるため、解体費用と負担金の合計額を売却査定額と比較してから判断されることをおすすめします。
A: 預貯金や有価証券などプラスの財産がある場合は、相続放棄するとすべてを失うため、国庫帰属制度や売却のほうが有利です。
一方、相続財産全体がマイナス(借金が多い)の場合は、3ヶ月以内の相続放棄が合理的な選択肢になります。ご自身の状況に合わせて専門家にご相談ください。
A: 不動産会社への売却や買取という選択肢があります。国庫帰属の条件を満たさない土地でも、買取であれば建物付きや境界未確定の状態でも対応できる場合があります。
当社では札幌・道内のワケあり物件の買取も行っております。まずは無料査定でお気軽にご相談ください。
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