「遺留分侵害額請求の通知が届いたけれど、手元に現金がない」というご相談は、相続の場面で少なくありません。相続した不動産を売って支払い資金を用意する方は多くいらっしゃいます。
この記事では、請求を受けた側が不動産を売却するときの流れを時系列でまとめます。評価額の決め方、期限、税金、札幌ならではの注意点もあわせて解説します。法律と税務の判断は弁護士・税理士へのご相談を前提とし、当社は査定と売却の実務を担う立場からお伝えします。
遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分のことです。遺言や生前贈与でこの取り分が侵害されたとき、侵害された人は不足分を請求できます。
2019年7月施行の改正民法により、それまでの「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に変わりました。不動産の持分を戻すのではなく、原則として金銭で支払う仕組みです。
そのため請求を受けた側は、まとまった現金を用意しなければなりません。預貯金で足りない場合に、相続した不動産の売却が現実的な選択肢になります。
遺留分の割合は、相続人の組み合わせによって変わります。一般的な考え方は次のとおりです。
たとえば相続人が子2人で、遺産が3,000万円の場合を考えます。遺留分の総額は1,500万円で、子1人あたり750万円が目安になります。
実際の金額は生前贈与の有無などで変わるため、具体的な計算は弁護士にご確認ください。
遺留分侵害額請求には期限があります。時間の流れに沿って整理すると、次のようになります。
請求を受けた側から見ると、通知が届いた時点で支払いに向けた準備期間が始まると考えておくと安心です。
請求を受けてから支払いまでには、いくつかの手順があります。全体の流れを先に把握しておくと、慌てずに対応できます。
一般的な流れは次のとおりです。期間はあくまで目安です。
2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が求められています。売却の有無にかかわらず、早めの登記が大切です。
すぐに全額を用意できない場合、裁判所に支払期限の猶予を求める制度もあります。利用できるかどうかは弁護士にご相談ください。
相続不動産の売却手順全体については、相続した不動産の売却について詳しく見るで詳しくご紹介しています。
遺産分割の結果、不動産が複数の相続人の共有になっているケースもあります。共有不動産をまるごと売るには、共有者全員の同意が必要です。
請求する側とされる側が共有者同士だと、売却価格や時期で意見が分かれやすくなります。自分の持分だけを売ることもできますが、価格は一般的に相場より大きく下がります。
共有のまま進める場合は、売却の条件を書面で取り決めておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
遺留分の金額は、遺産に含まれる不動産をいくらと評価するかで大きく変わります。ここが相続人同士で最も争いになりやすいポイントです。
不動産の価格には複数の「ものさし」があります。主な3つを比べると次のとおりです。
| 評価額の種類 | 水準の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 時価(実勢価格) | 実際に売れる価格 | 遺留分の計算(原則) |
| 路線価 | 公示価格の約80% | 相続税・贈与税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 公示価格の約70% | 固定資産税・登録免許税の計算 |
遺留分の計算では、一般的に相続開始時の時価を使います。請求する側は高めの評価を、請求される側は低めの評価を主張しがちです。
たとえば時価2,000万円の土地でも、固定資産税評価額では1,400万円程度になることがあります。評価の差だけで侵害額が数百万円変わる場合もあります。
当事者全員が納得しやすい根拠をそろえることが、争いを長引かせないコツです。当社では次のような準備をおすすめしています。
話し合いでまとまらない場合は、不動産鑑定士による鑑定を検討する方法もあります。費用は一般的に数十万円かかるため、査定書で合意できれば負担を抑えられます。
不動産を売って利益が出ると、税金がかかる場合があります。手取り額を見誤らないよう、売却前に試算しておきましょう。
譲渡所得は「売却価格 −(取得費+売却にかかった費用)」で計算します。相続した不動産の取得費と所有期間は、一般的に亡くなった方のものを引き継ぎます。
相続税を納めた方は、「取得費加算の特例」を使える場合があります。相続開始から3年10か月以内の売却であれば、納めた相続税の一部を取得費に加えられる制度です。
要件の判断は税理士にご確認ください。仲介手数料や登記費用など売却にかかる費用は、不動産売却の方法と費用で詳しくまとめています。
現金の代わりに、不動産そのものを請求者に渡して清算する方法もあります。ただしこの場合、渡した側が不動産を売ったものとみなされ、譲渡所得税がかかることがあります。
現金が手元に入らないのに税金だけが発生する、という事態になりかねません。不動産で支払う方法を検討する際は、事前に税理士へご相談ください。
札幌の不動産市場には、地域差と季節の影響という2つの特徴があります。支払い期限から逆算して計画を立てるうえで、押さえておきたい点です。
札幌では、地下鉄沿線や市街地エリアの地価が上昇傾向にある一方、郊外では横ばいや下落の地点も見られます。同じ札幌市内でも、立地によって価格の動きが大きく異なります。
相続開始から数年たってから査定すると、地下鉄沿線では評価額が上がり、郊外では下がっていることもあります。どの時点の価格を使うかで、相続人同士の意見が分かれやすくなります。
JR沿線や道内の地方都市の物件も、駅からの距離や需要によって差が出ます。地域の成約事例に詳しい会社に査定を依頼することが大切です。
北海道では12月〜3月の積雪期に内見が減り、売却期間が延びる傾向があります。仲介で通常3〜6か月かかるところ、冬は1〜2か月長めに見込んでおくと安心です。
当社によく寄せられるのが、郊外の空き家や市街化調整区域の土地を相続したケースです。一般の買い手が見つかりにくく、仲介では1年以上売れ残ることもあります。
支払い期限が迫っている場合は、不動産会社による買取を選ぶ方法があります。価格は仲介より1〜3割ほど下がるのが一般的ですが、1か月前後で現金化できる点が大きなメリットです。
遺留分の問題では、専門家ごとに担当する分野が異なります。役割を分けて相談すると、手続きがスムーズに進みます。
一般的には、次の順番で相談すると進めやすくなります。
話し合いの前に査定を取っておくと、評価額の根拠を示しながら協議を進められます。売却した場合の手取り額も見えるため、支払い計画を立てやすくなります。
当社は査定と売却の実務を担当し、必要に応じて弁護士・税理士との連携もお手伝いします。査定のご依頼は無料査定・お問い合わせからお気軽にどうぞ。
遺留分と不動産売却について、お客様からよくいただくご質問にお答えします。
A: はい、可能です。まず相続登記で名義を変更してから売却し、その代金から支払うのが一般的な流れです。
売却には仲介で3〜6か月ほどかかるため、支払い時期については弁護士を通じて相手方と調整しておくと安心です。
A: 一般的には、相続開始時の時価(実勢価格)を使います。路線価は相続税の計算用で、時価の約80%が目安です。
評価額で揉めないためには、複数社の査定書や周辺の成約事例を根拠にして話し合う方法が役立ちます。
A: 売却で利益が出た場合は、多くの場合で譲渡所得税の対象になります。所有期間が5年超なら税率は約20.315%です。
取得費加算の特例などを使える場合もあるため、具体的な判断は税理士にご確認ください。
A: はい、査定だけのご依頼も承っています。話し合いの前に査定を取ると、評価額の根拠として活用できます。
当社では札幌の成約事例をもとに査定書を作成しますので、まずはお気軽にご相談ください。
あわせてご覧ください
同じテーマの記事